夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
真摯に、ときには楽しく投稿

小雨降る情景を眺めたりすると、ときには『傘かしげ』のささやかな思い馳せて・・。

2012-06-16 07:58:01 | 定年後の思い
私は東京郊外の世田谷区と狛江市に隣接した調布市の片隅みに住む身であるが、
今朝どんよりとした曇り空で迎え、小庭の淡き緑色、或いは深緑色に染められた樹木を眺めたりしていた。
7時過ぎに、たわわな葉に雨脚の音を聴こえると、小雨が降りだしてきた・・。

私は小雨を眺めながら、日中は雨降る一日になるのかしら、
とぼんやりと見つめたりした。

私は雨が降ると、少し長め傘を持ち、大きく広げて差したりしている。
雨降りしきる中、少し風が吹いても、自身の身体はもとより、
手持ちのバックなどが濡れるのが嫌いで、少し重いが長めの傘を愛用している。


2004〈平成16〉年の秋に定年退職後、
年に数回、友人と懇親会と称して、都心の居酒屋に行ったりしているが、
6年前の晩秋の夜の6時過ぎ、たまたま雨が降っていて、都心の込み合ったビル街の歩道を歩いたりした。

前方から三人の若い女性が、やはり傘を差し、道幅いっぱいのように思えたので、
私は右側に寄り、傘を傾(かし)げながらすれ違ったのであるが、
若き女性のひとりが悠然と傘を立てながら、私とすれ違ったので、
私の左側が少し雨粒で濡れたりした・・。


4年前の梅雨の時節、昼下りの雨降る中、住宅街の脇道を歩いていたら、
前方から70歳前後のご婦人が傘を差しながら歩いてきたので、
私は、傘を傾げて立ち止まった。

そして、ご婦人は私とすれ違う少し前に、傘を傾けて、
私とすれ違う時、
『ありがとう・・ございました・・助かりますわ・・』
と会釈しながら、私に言った。


私の現役サラリーマンの時代、確か私が45歳の頃であったので、
20数年前の梅雨の季節だった・・。

私は六本木に所在している会社を退社した後、
自宅の最寄駅の『成城学園前』のタクシー乗り場に並び、
夜の11時過ぎ、雨の降る中、傘を差した・・。

私の前に20人ぐらい並んでいて、1番後方だった。
しばらくすると、私の後方に5、6人の人影を感じた。
私は左手にアタシュ・ケースを提げて、
スーツのズホンが濡れないように、傘を深く差していた。

後方から、
『おじさま・・かしら?・・』
と声がした。

私は振り返ると、若い女性のツーピース姿を見た。
『XXちゃんか・・しばらく・・』
と私は言った。

遠い親戚の娘さんだった。

私はこの娘を私の立っている場所の前に譲り、
『ずいぶん・・遅いんだね・・』
と私は言った。

そして雨のしずくが水色のツーピースに掛からない程度に、傘かしげにした後、少し間隔を開けた・・。

『おじさま・・知らなかった・・
私、今年から銀行にお勤め・・』
とこの娘は私に言った。

『大学に行ったのは聞いていたけど・・
そう・・社会人の一年生か・・何かと大変でしょう・・』
と私は言った。

『思ったより楽しいけれど・・勤務時間が長くて・・
今日もこんな時間になって・・』
と微苦笑しながら、私に言った。

『おじさんの所もね・・金融関係と違うけれど・・
何かと忙しいょ・・』
と私は言った。

雨がしきりに降っていた。

まもなく並びの列の先頭となり、
タクシーにこの娘が乗り込む寸前、
『おじさま・・お先に・・ありがとう・・』
と笑顔を浮かべながら私に言った。

私は走り去るタクシーの尾灯を見送った。


このような傘かしげのささやかな思いが、三つばかり思いだされ、
小雨降る情景を眺めたりした。

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コメント (2)
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