3月15日 鶯 初鳴き
3月27日 ハルリンドウ 開花
4月 3日 ベニシジミ 初見
4月 6日 イシガケチョウ 初見
6月10日 ホトトギス 初鳴き
7月 1日 クマゼミ 初鳴き
7月 2日 アブラゼミ 羽化1号
7月 4日 アブラゼミ 初鳴き
7月 5日 ヒグラシ 初鳴き、クマゼミ 羽化1号
こうして、今年も宴が始まった。もう20年近く、この時期になると、夜陰に紛れて庭の八朔の木の下に立つ。60ミリのマクロを噛ませたカメラを手に、およそ2時間かけて、蝉たちの羽化に立ち会い、命の不思議に寄り添うのが習慣になった。もう何度も何度も撮っているのに、数十枚の連続写真を撮ってしまう。三脚が立たない高さだから、自らを三脚にして目の高さの誕生を撮り続ける。
夕方の散水では、いやというほど藪蚊に苛まれるのに、何故かこのセミ誕生の2時間余りは、一度も蚊に刺されたことがない。謎を謎に残したまま、今夜もTシャツの腕を剝き出しにしたまま、カメラを支え続けていた。
生まれたばかりのセミの羽の、この神々しいまでの美しさはどうだろう!
多い時には120匹を超えていたセミの羽化が、ここ数年40匹から60匹に減っていた。それに呼応するように、かつては160個も実っていた八朔が、近年は30個程度に減っている。古木になって生命力が衰えてきたのもあろう。また、地下根を数百匹のセミの幼虫に吸わせている疲労もあるのだろう。命誕生の宴の席にも、それなりの歴史があるのだ。
ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、クマゼミと夏を追い立て盛り上げ、やがて8月半ばからツクツクボウシが秋風を呼び始める。最短最早で終わった今年の梅雨、6月から押し寄せてきた猛暑、既に37.2度まで記録して、どこまでこれから高温の日々を重ねるのだろう。虫たちの世界にも、それなりの異変もあるのだろうが、目につくのはむしろしたたかな順応力である。
「ジリジリジリジリ!」と暑苦しく絡みつくアブラゼミ、「ワシワシワシワシ!」と頭に共鳴するほど姦しいクマゼミ、いずれも油照りの夏の暑さをうんざりするほど思い知らされる鳴き声なのに、コロナ禍で聴く鳴き声に、ふっと元気をもらったような気がした。
6年も7年も地中に潜んで命を育み、ようやく地上に出て羽化し、束の間の命を種の維持の為だけに鳴きたてる。胸板を激しく震わせながら雌に訴える雄の健気さは、80余年生きた老体にまで、明日への命を吹き込んでくれるように思えた。。
それに較べて、人間の脆さ!七夕を前に、新型コロナ感染者数は増加の速度を上げ、福岡県に再び「コロナ警報」が発出された。第7波はお盆頃のピークを予想させながら、上昇のカーブを急角度に持ち上げようとしている。再開した気功も読書会も、再び中断のやむなきに至った。。
7月6日夕刻、第4回目のコロナワクチン接種通知が届いた。すぐにPC を立ち上げてWebを開き、5分で12日15時の予約を完了した。徒歩10分の近場の接種会場で、モデルナを選んだ。「ファイザー→ファイザー→モデルナ→モデルナ」のパターンである。重症化予備軍の後期高齢者に、躊躇う余裕はない。副反応がとやかく論じられているが、幸い3回目まで殆ど気にするほどの副反応はなかったから、迷わず早い時期優先で申し込んだ。
カミさんには10日前に通知が来たが、緑内障手術を6月30日に控えていたから、「術後2週間以降」という眼科主治医の指示に従い、7月23日の予約を取った。
世の中のすべてがコロナを軸にうねり、今までとは異質な社会を作りつつある。ITとかSNSとかという横文字の美名のもとに、「情報弱者」という上から目線の一括りで取り残されていく高齢者。高度成長を成し遂げ、一流国家の地位を維持し続けたのは、その高齢者たちだったという事実も、もう「年寄りの愚痴」でしかない。
羽化開始から5日で10匹を数えた。昨夜は4匹の競演、多いときは10匹を超えるセミたちが鈴なりになって羽化する。
娘からLineが来る。「毎晩ご苦労さま。夜も猛暑だから、水分摂ってね!セミの羽化見てて倒れたとか、しゃれにならん。朝、ジイジの脱皮見つけるみたいなのは嫌だわよ!」
いつも、遠くから心配してくれる娘である。
一段と遠くなった「昭和」が、「頑張れよ!」と囁きかけてくる。
シンドイ夏になりそうである。
(2022年7月:写真:始まった羽化の競演)