おかしな週になった。運転免許証更新・後期高齢者講習のまたまた三日後、「今週はシルバーウイークか?」とぼやきながら、校区の自治協議会主催の「健康度測定会」にカミさんと出掛けた。ちょっとグズグズした体調で態勢万全ではないが、先日の認知度テストをきっかけに、体力の総点検をするのも悪くないだろうと思ったのだった。
体重:適正、BMI(見た目の体形):適正、体脂肪率:やや高い、筋肉量:やや少ない、血管年齢:血管は老化していません。血管の弾力性は、とても良い状態です、骨密度:YAM(若いころに比べ)93%・AGE(年齢比)132%(あなたは若年者の平均に比べて同程度と言えます)、総合的身体年齢:歳相応。
筋肉量が少なく出たのは意外だった。「ほかの指数を考えれば、体質でしょう」と慰められたが、やや肥満度が高いのと無関係ではないのだろう。体重は理想値だから、まあ良しとしよう。
さて、体力……握力の減退はショックだった。若いころは50キロ近かったのに、34キロに落ちていた(5点)。30秒間の上体起こし:12回(6点)、開眼片足立ち:2分(10点)、10メートル障害歩き:5.9秒(7点)、長座体前屈:19センチ(2点)
トータル30点:総合評価B(やや優れている)。長座体前屈は、中学生の時に痛めた腰痛を60年以上引き摺っているから、身体が硬いのは仕方ない。
開眼片足立ち2分を余裕を持ってクリアしたからニンマリしていたら、翌日右足太ももに見事に凝りが来た。夏の暑さで歩きをサボっていたツケ、バランスはよくても筋肉は弱っているという証しだった。
1週間の三つのテストで、年齢的立ち位置がはっきりした。過信もよくないし、かといって徒に歳を感じるのも又決していいことではない。いい機会だったと思う。まずまず順調に歳を取ってるということか……と、いささか負け惜しみっぽい自己弁護をしながら、遅れてきたシルバーウイークを閉じた。
その二日後の今日、高校卒業59年目の同窓会に出掛けた。453名(内、女子73名)のうち、わかっている物故者100名(内、女子3名)と、およそ四分の一が彼岸に渡ったことになる。親友だった二人も、もうこの世にいない。お互いの加齢や薄くなった頭をからかい合い慰め合いながら、和気藹々の3時間を過ごした。
それにしても、女性の物故者比率の少なさはどうだろう!80歳まであと2回開催する予定だが、年々少なくなっていく仲間を数えるのは寂しい。
東京から来た友人の一人は、既に17年間連れ合いの介護を続けているという。三度の食事を全て支度し、そのために卒業以来同窓会に来ることが叶わなかった。「今日は、施設のショートステイに預けて、初めて出席した」という。
『いずれ誰もが介護保険の世話になる時が来る。その時、男は「そんなところには行きたくない」と駄々をこねる。しかし、それは自分の為ではない、介護する奥さんを休ませる為だという事を忘れないでほしい』と、長年の経験が言わせた彼の言葉は説得力があった。
庭の15センチほどの小さな実生の山椒に、アゲハの幼虫がしがみついていた。今日は立冬、霜注意報が出る季節である。この冷え込みの中で、残り少ない山椒の葉を食べながら終齢まで育ち、無事に蛹までに辿り着ける可能性は限りなく低い。
遅れてはいけない営みがある。しばらく続いた温暖な日差しに、体内時計を狂わせてしまった蝶が本能的に卵を産み落としたのだろうが、孵った幼虫には、もう季節を選ぶことは出来ない。
どうしてやりようもない自然の営み、触ると一丁前にオレンジ色の角を振り立てて威嚇してくる健気さが、切なくやるせなかった。
宵闇に、何処かで虫がきしり鳴いて、やがて雨が来る。
(2017年11月:写真:遅れてきた幼虫)