最近、物語の結末が二転三転する演劇と映画を続けて観た。演劇の方は「キネマの天地」、映画は「ミケランジェロの暗号」。
「キネマの天地」は井上ひさしの作品。撮影所にベテラン、中堅、新人の女優4人が集められ、映画への出演依頼かと思うと、監督の妻の殺人事件の犯人探しが始まる。舞台は一場面だけなのでその中で出演者全員の丁々発止のやりとりが繰り広げられ、結末も二転三転していく。井上ひさしの芝居はミュージカル仕立てのものも多いが、こういうセリフのやりとりで魅せる芝居の方が好きだ。
最近前妻の西舘好子による「裏表井上ひさし協奏曲」という本が出たが、それによると家庭的にはDVなどもあって、問題が多かったらしい。天才には毀誉褒貶がつきものということだろうか。しかし亡くなってしまったのはつくづく残念。
「ミケランジェロの暗号」の方はナチスドイツの時代の話。画廊を経営するユダヤ人が持つミケランジェロの素描をナチスが没収しようとするが、画廊主はそれに対して偽物を掴ませて抵抗する。本物を見つけようとやっきになるナチスと渡り合う画廊主の息子と、その幼なじみのナチス党員との間で人物が入れ替わったり、こちらも二転三転する結末。
普段の生活の中で何かにだまされるのはごめんだが、映画や芝居の中でだまされるのは大歓迎。二転三転と変わるのも悪くはないが、好みとしては一度限りの大どんでん返しの方がおもしろい。例えばビリーワイルダーの昔の映画「情婦」のように見事にだまされる映画や芝居を観てみたい。