毎年この時期になるとNHKで戦争関連の番組が放送される。そのひとつとして、小林正樹監督の映画「人間の條件」がBSで放送された。1959年から61年公開の全6部の長大作だが、若いときに映画館での一括上映で観たことがある。今回は1部ずつ分けての放送だったが、たまたま放送に気づき途中から見始め、結局完結編まで観てしまった。
軍隊での古年兵からの制裁、突撃で生き残り、部隊から離れ中国大陸を彷徨い、やがて終戦、さらにはロシア軍の捕虜になりそこでの過酷な労働と、これでもかというぐらい主人公の梶上等兵が理不尽な扱いを受ける。そんな中でも理性を保つことが人間としての条件ということか。
所属する部隊を離れ、ロシア軍に捕まるまでの間、満州に取り残された民間人や敗残兵たちがそんな梶を信頼し付いてくることになり、リーダーとしての強さ、信念、人間性も描かれる。梶は妻美千子に対して顔向けできない、恥ずかしいことはできないという強烈な思いを支えに、妻の元に帰ることを目的に彷徨い続けるという重い内容だが、梶を演じる若き日の仲代達矢のギョロ目の迫力に圧倒され、見始めると止まらなかった。
さらには「人間の條件」に続いて、戦争を体験した兵士の証言を綴った番組も放送された。敗戦から67年、兵士で生き残った人が年々少なくなっていくなかでの貴重な証言としてそちらからも目が離せなくなってしまったが、その重さに見終わってどっと疲れた。
亡くなった父親も兵士として中国戦線、南方戦線と従軍し、終戦はフィリピンのルソン島で迎えたことは知っているのだが、生前詳しい話を聴いておかなかったことが今になって悔やまれる。