中央線沿線には多くの山があるがそのなかで以前からその名が気になっていた山がある。それは雁ヶ腹摺山(がんがはらすりやま)だ。それも本家の「雁ヶ腹摺山」の他に「牛奥ノ雁ヶ腹摺山」と「笹子雁ヶ腹摺山」と全部で3つもある。その名のとおり雁が山の腹を摺るように飛ぶことから名づけられたことからするとよほど雁の飛来が多いところのようだ。今でも飛来するのだろうか。
今日はその3つの中でも駅からのアクセスのよい笹子雁ヶ腹摺山(1357M)に登る。笹子の駅から車道を30分ほど歩き登山口へ向かう。登山口の手前が工事中で道が付け変わり臨時の登山口は墓地の中にあった。急こう配の杉林を抜け鉄塔に出て尾根を辿っていく。道は南向きの斜面なので雪のないところが多い。
先行者は足のでかい大男?
2時間弱で頂上着。富士山の頭がぼんやりと見えている
予定ではいったん下って米沢山、お坊山などへ登り返し甲斐大和の駅へ下りていくつもりだった。ここからは斜面が東向きになって雪が増えてくる
やっぱり雪道はいいなぁと鼻歌交じりに下りて行くが、その先に流血の惨事が待っているとは・・・。
いったん下りて小さなこぶを登り返しその下りがけっこう急傾斜だった。ツボ足でそのまま下りていくと足元の雪がずり落ちるのに合わせて私もずり落ち1回転。木の幹に激突。頭をぶつけたが痛みは「アッ、いて」ぐらいで大したことはなかった。しかし雪の斜面に鮮血がぽたりぽたりと落ちる。
さすがにこれはまずいと少々焦るが「落ち着け」と言い聞かせてとりあえず安全なところまで下りてザックから救急セットを取り出す。どうも額を切ったようだ。テープでぐるぐる巻きにして上からバンダナを巻きつける。
これで少し落ち着きお茶なども飲みこれからどうするか考える。このまま予定通り進むことも考えたが距離的にも時間的にもこれまでより長くかかりそうなので結局来た道を戻ることにする。
これ以上のケガは勘弁してほしいのでより慎重に笹子の駅に下っていく。駅の看板の文句が身に染みるなぁ
顔に血糊が張り付いている感じがありこのままで電車に乗ると周りが引きそうなのでトイレの鏡を見てふき取る。
この時テープがずれたのか電車に乗ってからまた出血し時々血が頬を伝う。その場でテープを巻きなおすわけにもいかずハンカチを当ててしのいで甲府の駅に戻る。
出血が止まっていたらそのままホテルに帰るつもりだったが、大事をとって外科で処置してもらおうと駅の観光案内所で近くの医療機関を聞いてみるが今日は土曜日なので午後休診のところが多い。それでも案内所の方が親切に探してくれなんとか1軒見つけてくれたのでタクシーでそこへ向かう。
結局傷そのものは小さく縫う必要もなく消毒と止血をして絆創膏を貼ってもらい化膿止めの薬をもらって一件落着。
医師によると患部はよくボクサーが切るところで出血が多いところのようだ。ホテルへ帰ってよく見ると確かにノックアウトされたボクサーそっくりの目の腫れ方をしている。
大事に至らなかったのが幸いだが、すべて私の判断の甘さ故の事故なので猛省している。もともとピッケルが必要な山ではないがザックにはアイゼン、ヘルメット、ストックを入れていた。アイゼンがよく効く締まった雪ではなかったがせめて下りに入った時点でヘルメットを被りストックを出すべきだった。
最初からアイゼン、ピッケルのいるような斜面ならそれなりに緊張し慎重に行動したと思うが、樹林帯の斜面ということで油断した。樹林帯には樹林帯の危険があることを認識しておくべきだった。
この何年か単独であるいはツアーでけっこう雪山に入る機会が多かった。ひとくちに雪といってもその状態は地形、気象条件などによって様々。その場の状況に合わせた装備と歩き方が必要なのだということがわかってきて多少自信もあった。
今回はその慢心があった。大事には至らなかったがヘタをすると致命的な事故につながりかねなかった。雁ヶ腹摺山は私ヶ額擦り山だったなぁと自嘲気味に猛省。
この後続けてまだ予定があったがさすがにそれは取りやめ帰宅し自宅謹慎中。次はどこへ行こうかと考えているのはあまり懲りていないからか。
反省!