太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

映画2本

2012-04-30 09:11:25 | 勝手な映画感想
最近みた映画を2本。

日本で公開されるのかどうかわからないけれど。




「CHIKO AND PITA」


1940年代の、ハバナが舞台の大人のアニメーション。

音楽と歌がすごくいいし、独特な絵も、ラインがきれいで惹きこまれる。

バンドのピアニストをやっているチコと、歌手のリタの、甘酸っぱい恋物語。

全編スペイン語なので、英語の字幕があって、とってもわかりやすくて、これもヨシ。




「JIRO DREAMS OF SUSHI」



85歳になる、伝説の銀座の鮨職人、小野二郎さんのドキュメンタリー。

ミシュランで3年連続3つ星をとった彼は、最高齢でギネスにものる。

7歳で家を出て、社会の中で生きていかねばならなかった彼は、辛酸を舐めたであろうそのあとの人生のことには、映画の中で触れていない。

『いつだって前を見て、どうやって今より良くなるかだけを考えている』という二郎さんの哲学では、

そういう過去は語っても仕方がないものなのかもしれないし、同時に思い出したくないことなのかもしれない。


SHOKUNIN(職人)という言葉が何度も出てくる。

自分にも人にも厳しく、同じことを毎日繰り返し、評価され、賞賛を受けても、自分で「完璧だ」と思える瞬間は1度だってない。

しかしそれでいて、明日死んでも悔いはない。

彼はそういう頑固で、とっつきの悪い、骨の髄からの職人なのだ。

よく切れる日本刀、それも床の間や博物館に飾ってあるのではなく、今も脂がうっすら乗っていて、今すぐに使える刀。そんなイメージがある。



銀座の店は、10席のカウンターのみ。お昼と夜と、予約客のみで、予約は1ヶ月前から。

つまみなどはなく、鮨のおまかせコースだけで、値段は3万円から(その日の仕入れによる)。


フードライターの山本益弘さんが、「何度行っても緊張する店」と言っていたが、スクリーンを通しても、その緊張感が伝わってくる。

鮨を食べるというよりも、茶席にいるような感じで、厳粛な気持ちで食べさせていただく気持ちになるのではないか。

間違っても会社の愚痴や、世間話などできない。




私が最初に就職した会社の近くに、美味しいが怖くて有名なラーメン屋があった。

私も1度だけ行ったことがあるが、笑ったら損だと思っているに違いない夫婦で切り盛りしており、店の中には試験会場のような緊張感が漂う。

うっかり誰かが「おかみさん、ビール」などと言おうものなら、

「ビールが、なに?」とキッと睨まれる。

「・・ビールを・・クダサイ・・」と、叱られた子供のようにドギマギとしながら小声で答えるという具合だ。

ラーメンの味など、私にはさっぱり思い出せない。

ひたすら早いとこ食べて帰ろう、それだけだった。



夫が言うには、ホノルルにも似たような店があるらしい。

そこは鮨屋で、夫が行った時、「アナゴ」と頼んだら

「ノー。君はアナゴを食べたくはない」

と断られて、大将が決めた「その人の食べたいであろうもの」を握って出すというのだ。

サイキッカーか?それともゴルゴか?



怖いラーメン屋も、いつも混んでいるようだったし、サイキッカー鮨屋もつぶれずにあるということは、お客がちゃんといるのだろう。

だけど私は、どんなに美味しいものでも、どんなに有名でも、

緊張しながら、卑屈な気分になりながら何かを食べるのは、たとえそれが無料であっても遠慮したい。


二郎さんのお鮨は、ヨダレがでるほどおいしそうだったけど、

まわるお皿に囲まれてゲラゲラ笑いながら食べるお鮨のほうが、私は気が楽でいいなあと思うのである。










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