ラスベガスは巣鴨か

職場の本屋で本の整理をしていたら、二人のおばあさんの会話が聞こえてきた。

二人は初対面らしい。


「ダウンタウンの方？」

「違う違う、もっと先のほう」

「そんなお店があったかねえ」

「あるんですよ、それが。ドンブリとかね、食べさせてくれるの」


ハワイ地元情報のやり取りかと思って聞いていた。



「フラミンゴのあるホテルあるでしょ、あの向こうって言えばいいかしらね」



フラミンゴのあるホテル？そんなのハワイにあったっけ？



「年明けに行こうと思っているんだけど、そちらはいつ行かれます？」

「先月行ってきたばっかり。春頃に行けたらいいけどね、友達に聞いてみないと」

「私もね、いっつもじいさんばあさん連中で行くんですよ、おたくも？」

「そうそう。向こうへ行っても、じいさんばあさんばっかり、あはは！　ルーレットの文字がかすんじゃってねえ」

「向こうで何度も会って知り合いになる人たちもいて、予定を合わせたりしてね」

「あそこは何度行ってもいいワー」



おばあさん達が話しているのはハワイじゃなくて、　ラスベガス　だッ！



拝見したところ、特にハイカラとか洗練されているふうでもなく（失礼・・）、「普通の日本のおばあさん」なのだ。

確かに、ラスベガスに格安で行けるツアーが、ハワイにはいろいろある。

ハワイ諸島の他の島に行く往復の航空運賃で、ラスベガスで何泊かできるのもあるらしい。

日本のお年寄りが、巣鴨に行ったり温泉に行くような感じで、ハワイのお年よりはラスベガスに行っているのか・・・・・・・

そいつぁ知らなかったなあ。

ベガスも今は巣鴨になりつつあるとは。

日本人が、高い国内旅行よりも、格安のグアムやサイパン、韓国などに行く感覚だろうか。




「日本に帰るのも、エアラインが高いでしょ？」

「そうそう、それでついラスベガスのほうがいいかと思っちゃうんだけど、カジノでお金を使ったら、結局日本に帰ったほうが経済的だったりしてね」


オアフ島なんて、車で２時間強走れば１周できるぐらいの狭い島。今更目新しいところなんかありゃしないのだ。



普通の、地味～な、お化粧けのない日本のおばあさんたちが、ラスベガスの派手なネオンの中を揚々と闊歩している姿を想像して、

なんだか嬉しくなってきた。








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