太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

本物で本場のクリスマス

2012-12-23 21:18:53 | 日記
高校生の時、父親が牧師さんのクラスメイトがいて、教会でやるクリスマスに仲良し4人を誘ってくれた。
カトリックの学校にいながら、まるきり仏教徒であった私たち4人は、教会でやるクリスマスなんか初めてで、
本物のクリスマスが体験できると舞い上がった。

おまけに牧師さんをしているお父さんは外国人だったから、
本物の上に本場のクリスマスだ、と興奮した。

「どんなゲームやるのかねぇ?」
「料理はどんなだろ?」
「ケンタッキーのパーティバーレルじゃないよね」
「やっぱさ、七面鳥じゃないの?」
「私、七面鳥食べるの初めてだよう」
「私もー。何着てく?出会いなんかあったりして」
「やだあー、楽しみになってきたあ」


なんちゃって仏教徒であるから、信仰心もそれなりで
日頃の宗教の授業も、ミサも、なんとなく受けているだけ。
そんな残念な私たち4人に想像できる「本場で本物のクリスマス」は
いわゆるクリスマス パーティの域を出ず、こんなもんであった。

期待を胸に、私たちは2両しかない小さな電車を降りた。
地下道を抜けた先に、その教会はあった。
電飾の飾りも、クリスマスツリーもなく、いくつものロウソクが灯されている。
20人ほどの人が静かに集まり、友達のお父さんのお父さんのお話を聴き
オルガンに合わせて讃美歌を歌う。

ゲームも、七面鳥も、出会いもなく、おごそかにクリスマスは終わった。

「今日は来てくれてありがとう。すごくいいクリスマスだったね」

駆けよって来てそう言う友達に、私たちは愛想笑いでごまかすしかなかった。

駅まで誰もしゃべらなかった。
電車に乗ってしばらくして、誰かが
「七面鳥、なかったね」と言った。
誰もそれには答えなかったが、みんなの頭の中は
バカ騒ぎを期待していた自分たちのおバカ加減と、喜んでくれた友達の清らかな瞳と、
しかしその自己嫌悪にあってもなお、拭い着れない激しいガッカリ感が
ごうごうと渦巻いていたのだった。

無口な4人を乗せた電車は、クリスマスの夜をガタガタと走り抜けていった。



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