太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

乗り物酔い

2013-04-11 07:34:38 | 日記
ものごころついたときから、私はよく乗り物酔いする子供だった。

父は、よく家族を車に乗せて出かけたものだったが、

すぐに酔って吐いたりする私に迷惑していた姉が、

「歌を歌えば、歌っている間は酔わないよ」

と提案し、私は学校で習った歌を片っ端から歌った。


3,4曲は調子がよかったが、

「♪あーきの 夕日ーにー 照る山もみじ~・・・うえええぇぇぇぇ~」

「うぎゃー!おかーさん、シロが吐いたぁーーー!」

歌いながらでも酔える私にとって、学生時代の遠足は過酷だった。


観光バスの、あの独特のにおいで「うっ」となり、

走り出す前から酔っているようなものだ。

遠足の朝は、みかんや卵を食べないとか、おまじないをするとか、

遠足の楽しさそっちのけで、どうやって酔わないで乗り切るかに必死だった。

母に聞いたことはないけれど、

当時は子供用の酔い止めの薬はなかったんだろうか?あったと思うんだけどなあ。




自分で車を運転するようになり、自動車はまず酔わなくなった。

(タバコのにおいのしみついた車は苦手)

バスのにおいも、以前ほど気にならなくなり、

走行中に地図や本などを読まなければ、酔うことはない。



しかし、船や飛行機は依然ダメで、

遊園地の左右におおきく揺れる遊具やコーヒーカップもダメ。

外が透けて見えるエレベーターもダメ。

飛行機もエレベーターも、下がってくるときに、

内臓がそっくり口から出てきそうな感じになる。




二十代の頃に、寝ていて眩暈がして、総合病院で検査をしてみたら、

生まれつき三半規管が弱いらしいということがわかった。

これには治療法というものもなく、ただじょうずにつきあってゆくしかないという。




職場の本屋にいた親子づれ。

2,3年生ぐらいの子供が車に酔うらしい。

アメリカ本土に行ってバスに乗るのが嫌だと言っているようだ。

「酔う、酔うって思うから酔うだけで、酔うことを忘れちゃえば酔わないもんよ」

ああ、私の母もそう言ったような記憶がある。

それは一理あると思うけれども、

酔ったことがない人に、

クラスメイトがいる中で、酔って吐いてしまう子供の辛さも、

通路側じゃない飛行機の座席で、胃の中のものがせりあがってくるのを、

どのタイミングで洗面所に立とうかと、両脇の人々の様子をさぐりながら

脂汗をかいている辛さもわかりはしないだろう。



酔い止めは効く。

効くが、ロングフライトでない限り効きすぎてしまい、目的地に着いても

眠くてどうにもならない。


「酔わない、酔わない」と言い聞かせてみたこともあるが、

これでは「酔うこと」を前提としているので意味がないというのも後でわかった。


今は、日本ーハワイ間ぐらいなら、酔い止めなしで乗っている。

酔ったら酔ったときのことだ、と腹をくくるほどの図々しさが備わった一方で、

お守りのように酔い止めの薬をバッグに忍ばせている弱気なところもある。





「バスに酔うから嫌なんだよ」

ふてくされたように言う、本屋にいた子供の心細さがストレートに伝わってきた。







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