太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

びにょ~る

2014-06-09 21:10:40 | 英語とか日本語の話
10年以上も昔になるが、

実家界隈に、包丁の研ぎやさんがまわってくるようになった。

首にてぬぐいを巻いたおじいさんが、新聞屋さんが乗るような自転車に研ぎ道具を乗せて、

ゆっくりゆっくり走り、

家を訪問しては、研ぐものはないか聞いてまわる。

私の母が、実家界隈では最初のお客だったのではないか。


おじいさんが、母が差し出した包丁を、家の前のドブ川の淵で研ぐ。

それを見かけた近所のおばさんが、「あら私もやってもらおうかしら」となり、

それを見た、また誰かが、「それじゃあ私も」となって

研ぎやさんは結構お客がついた。


いつだったか、知り合いの人が、「研ぎやさんが家に来るけれど、

子供もいるし、包丁を渡して何をされるかわからなくて気持ち悪いわよね」

と言って、返事に困ったことがあった。

そういうものなのか、とも思う反面、うら寂しいような気もした。

確かにきっちりした身なりじゃなかったりするんだけれど。



さて話を例の研ぎやさんに戻そう。

意外と包丁はうまく研ごうとしても難しいものだ。

プロに研いでもらうと、見事に切れ味が戻る。

鋏も研いでもらえるとあって、研ぎやさんが来ているとわかると、

家中の包丁、鋏、枝きり鋏まで抱えた奥さん連中が集まってくる。

ただ、研ぎやさんがいつ来るのかがわからない。

だいたい2週間後、と言っても、3週間後だったり、翌週に来たり、

要するに気の向くまま。

いつ来てくれるかわかると助かるんだけどねえ、と言いつつも、

ごま塩頭に、生成りのズボン、同じ色合いのTシャツ、よれた運動靴。

欠けた前歯を見せて笑うおじいさんを、誰も咎めたりできないのだった。



その研ぎやさんが、実家の近くにあった私の職場にも来るようになり

私は研ぎやさんの仕事ぶりを眺めたことがある。

無口というよりも、口が重い、といったほうが似合うようなおじいさんが

鋏を研ぎながら、手元を見たままポツリと言った。



「鋏はね、びにょ~る が切れるようにならにゃだめだけんね」




びにょ~る


それがビニールだとわかるのに、数秒かかった。

お年よりは、カタカナ言葉が苦手だったりする。

私の父も、パーティのことは今でも パーテー だし。

だから、研ぎやさんもビニールと言えないのだな、と思っていた。




ところが、である。

英語を使うようになってわかったのだが、ビニールは、びにょ~る と発音するのだ。

ビニール、と言っても通じない。

おじいさんが言ったように、びにょ~る、と言うと見事に通じる。

研ぎやさんの発音は、英語のネイティブの発音そのまんまだったのである。

おそるべし、研ぎやのおじいさん。


びにょ~ると言う場面があるたびに、歯の欠けた笑顔を思い出す。











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孔雀のヒナたちは今

2014-06-09 07:46:51 | ハワイの自然
我が家にやってくる野生の孔雀たち。

そのヒナ4羽が今はどうなったかというと。




あらー、もう立派に羽根の色も変わってるし。





こんなヨチヨチだったのが・・・




つい先週あたりはこんなふうになって・・・




今はコレだもの。



この子はたぶんオスなんだろうなというのは、







こうやって羽根を大きく広げる真似をするから。

他の3羽はこんなことをしない。




母親は、もういない。

数日前の早朝、ヒナたちが母親を呼ぶ声がしていたけれど。

「ままー。ままー」と言っているように聞こえるから、そうなんじゃないかなと思うだけなんだけどね。


4羽はいつでも一緒。

一緒に寝て、一緒に朝食を食べて(うちの庭で)、4羽で我が家のドライブウェイをひょこひょこ歩いて

ジャングルを通り抜けて、隣のお寺まで行く(と思う)。

1羽も欠けることなく大きくなってよかった、よかった。







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