私の母は8人きょうだいの下から2番目なので、叔父叔母はたくさんいるのだが、
中でも1番濃くかわいがってもらった叔母がいる。
その叔母は、母のすぐ上の姉で、Fおばちゃんとしよう。
子供の頃から、夏休みなどの長い休みには、Fおばちゃんの家に泊まりに行った。
Fおばちゃんの家には、うちにはいない鶏がいて、毎朝新鮮な卵を産む。
まだほの温かい卵を初めて触ったときの、ぞくぞくするような気持ち。
Fおばちゃんは、その卵で、甘いオムレツを焼いてくれた。
Fおばちゃんは小学校の教師をしており、
夫である叔父は、当時、別の学校の教頭先生だった。
叔父も叔母も温厚な人柄で、とくに叔父などは、善人を固めて作ったような人物。
私はついぞ叔父の不機嫌な顔をみたことがない。
Fおばちゃんの家で、私はとても楽しく過ごしていたのであるが、
ただ一つ、どうしても不思議なことがあった。
普段は使うことのない応接間にテレビがあって、
プロレスが始まるとFおばちゃん家の人々が人が変わるのだ。
テレビの前に座り、プロレスラーが闘うのを、大声をあげながら観戦する。
「今!今だ、そこ!あー、そこじゃないッ!」
「よしッ、よしッ、いけいけいけいけ!!」
「あーーーーーーッ!」
我が家でプロレスを見る人はいなかったし、
善人を固めてできたような叔父叔母が、頭から湯気をたてて叫ぶのを
私は唖然として眺めているのであった。
プロレスが終われば、彼らは再びやさしい叔父叔母に戻るのだけれど、
その変わりようが見事で、私は今でもプロレスと聞くと、Fおばちゃんの応接間を思い出すのである。
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中でも1番濃くかわいがってもらった叔母がいる。
その叔母は、母のすぐ上の姉で、Fおばちゃんとしよう。
子供の頃から、夏休みなどの長い休みには、Fおばちゃんの家に泊まりに行った。
Fおばちゃんの家には、うちにはいない鶏がいて、毎朝新鮮な卵を産む。
まだほの温かい卵を初めて触ったときの、ぞくぞくするような気持ち。
Fおばちゃんは、その卵で、甘いオムレツを焼いてくれた。
Fおばちゃんは小学校の教師をしており、
夫である叔父は、当時、別の学校の教頭先生だった。
叔父も叔母も温厚な人柄で、とくに叔父などは、善人を固めて作ったような人物。
私はついぞ叔父の不機嫌な顔をみたことがない。
Fおばちゃんの家で、私はとても楽しく過ごしていたのであるが、
ただ一つ、どうしても不思議なことがあった。
普段は使うことのない応接間にテレビがあって、
プロレスが始まるとFおばちゃん家の人々が人が変わるのだ。
テレビの前に座り、プロレスラーが闘うのを、大声をあげながら観戦する。
「今!今だ、そこ!あー、そこじゃないッ!」
「よしッ、よしッ、いけいけいけいけ!!」
「あーーーーーーッ!」
我が家でプロレスを見る人はいなかったし、
善人を固めてできたような叔父叔母が、頭から湯気をたてて叫ぶのを
私は唖然として眺めているのであった。
プロレスが終われば、彼らは再びやさしい叔父叔母に戻るのだけれど、
その変わりようが見事で、私は今でもプロレスと聞くと、Fおばちゃんの応接間を思い出すのである。
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