太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

親切なわたし

2016-06-02 20:25:18 | 日記
自分の親切さについて考えさせられたことがあった。

私は自分は親切なほうだと思っていて、とりたてて疑問をもったこともない。


登場するのはピカケである。(ピカケの話はコチラ

ある土曜日、ピカケが私に聞いた。

「火曜日、どこかに行く用事ある?」

火曜日は私の休みの日だ。カイルアにある友達の家に行くと答えると、

「え!カイルアならワイマナロに近いね!」

と顔がパーっと明るくなった。


「ワイマナロにある歯医者までお金を届けてもらえないかなあ」


火曜日までに治療費の半額を払わないとならないのだが、火曜は仕事なので行けない。

メールで送ればよかったのだが、うっかりしていた、という。

アメリカでは治療費などの支払いは、個人小切手で郵送するのが一般的。

カイルアとワイマナロは、5~10分ぐらいで近いといえば近い。

でもワイマナロのどこかもわからない。


さすがに私も、一瞬迷った。

今までも帰りにピカケを更正施設まで送っていったことが2回ある。

自宅を通り越していくわけだから、遠回りではあるが、たまのことである。

火曜日も、少し早く家を出れば行けるけれど、

これは彼女の問題で、私がそこまですることもないんじゃないか、とも思う。

しかし、彼女には車がない。

4本ない前歯を見て、私は「いいよ」と言った。



前日の月曜が給料日なので、その日帰りに私と一緒に帰ってお金を引き出して、

現金を渡す、というのだが、

その月曜は私に医者の予約が入っていて、早退しなければならない。

それで私は、火曜日の朝に職場に寄り、ピカケからお金を受け取ってから行くことになった。

月曜じゃないとお金がないのだから、それしかない。


私は、夫に話してみた。(火曜の朝、職場に寄ることは言わなかった)

黙って聞いていた夫が言った。

「それってノーマルだと思う?」

ノーマルじゃないと思うから聞いたんじゃないか、と心で言ったが、黙っていた。

私にしてみたら、相当人がいいと思う夫に言われたことで、ショックだった。



結局、歯医者は友人の家から5分ぐらいのところにあり、

ピカケが書いた詳細な地図と、私が何の説明をしなくてもすむような手紙を書いたおかげで

すぐに用事は済んだ。



可能なことなのだから、やってよかったのだと納得したい私がいる。

利用されて、甘くみられているのだという思いが、苦い味となって口の中に広がる。

親切にしたことで、自分のそういう面を見てしまったことのやりきれなさ。







今まで私がつきあってきた人達は、おおかた、距離のはかりかたが似ていて、

こんなふうな気持ちになることはなかった。

親切を申し出て、いったん相手が遠慮して、さらに申し出るだとか、

またその逆であるとか、

同じ親切を繰り返しても、当たり前に思わないで感謝するだとか、

互いに引いた線の位置が近いと、そういうやりとりがスムーズにできる。


一人、そうじゃない人がいたのを思い出した。

昔の職場のお局で、ホームセンターのチラシに載っていた鍋を買ってきてくれと言う。

彼女は車を運転しないので、私は帰りに「遠回りをして」それを買った。

翌日、それを持ってゆくと、イメージが違ったのか

「あ、それならいらない」

お金を払うとも、返しに行くとも言わない。私は鍋を持ったまま、あっけにとられた。

さすがのピカケも、そこまでではないと思う。




ピカケはその週末を最後に仕事に来なくなった。

アパートも引き払っていて、連絡もつかない。

私のザワザワした気持ちはそのままで、

やってあげればよかったと後悔するより、やってよかったのだというところに、

むりやり折り合いをつけようとしている。



1週間ほどして、ピカケがひっそりとユニフォームを返しに来たらしい。

半額払った義歯はどうしただろう。

そのとき前歯があったかどうか、応対したマネージャーに聞きたかったけれど、

聞くタイミングをなくしたままだ。





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