太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

千の風

2019-05-16 02:49:47 | 日記
先日の母の日。
近所のお墓には、朝からたくさんの車が押し寄せて、昼過ぎまで列を作っていた。
お墓

どうみてもその辺の公園にしか見えないけど、これがハワイのお墓。
芝生の上に墓標が埋められていて、
その横で家族でピクニックをするのだ。
日本のお墓のイメージで、墓の横でお弁当を広げて遊ぶなんてありえないけど。

「わざわざお墓に行かなくても、家で ”おかあさん、ありがとう”
って言って、母親の思い出話しながら食事するほうがずっといいのにな」

夫が言った。
私もそう思う。
もし私が死んでお墓を作ってもらったとしても、私はそこにいないと思う。
が、お墓にこだわる人だっている。
たとえば私の祖父。
私が離婚して実家に戻ってきたとき、1番喜んだのは既に亡くなっていた祖父だ。
霊能がある人に、言われた。
祖父は私に家業を継いでほしかったのだ。
でも私にはそうできない理由があった。
霊能者とそういう話をしているとき、その場に祖父の魂はいたそうだから
話はわかっているはずなのに、霊能者は言いにくそうに言った。

「でもねェ、おじいちゃまがちゃんとお墓まで来て説明してほしいって
おしゃってるんですよ。頑固な方でした?」

頑固も頑固。頑固の国から頑固を広めに来たような人だ。
それで翌日、私は祖父の墓に行ったのだけれど、お線香をつけようとすると
ブワーと風が吹いて消える。
つけなおそうとすると、また風が吹く。
「もう!せっかくここまで来たんだから、やめてよぅ!」
祖父もそうだったし、きっと父もそうだ。
千の風になる人もいる。
なりたくない人も、またいる。

ハワイ大学の、あるプログラムに、私達夫婦は登録しようと思っている。
死んだあと、検体すると、学生が学んだあと
骨をマジックアイランドの海に散骨してくれるのだ。
マジックアイランドは私達が結婚した場所。
お墓などいらない私達にとって、誰かの役にたったうえに、
結婚した場所に帰ることができるのは、願ってもないことである。

母の日、実家の母にかわいいピンクのTシャツを贈った。
最近、持病が進んできて、歩くのが大変になった。
電話をすると、出るまでにそうとうの時間がかかる。
それでも、こうして話ができることはなんと幸せなことだろう。