太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

イーダ!

2019-08-17 16:01:52 | 日記
池井戸潤氏の小説を読んでいたら、
主人公が子供の頃に、クラスメートと口喧嘩になり、
「イーダ!」
と言う場面があった。


いたーーーー!!

と私は心で叫んだ。
子供の時分、姉と喧嘩をして、形勢が悪くなると
「イーダ!」
と、歯をくいしばり、口を思い切り横に広げて憎らしい顔を作って言った。
私がそう言うと、姉も
「イーダ!」
と言い返し、少し歳の離れた妹までもがマネをした。
誰に教えてもらったのか、どこで仕入れたのかわからない。
けれど、どの子供もみんな喧嘩のときには「イーダ!」と言うものだと思っていた。

ところが、「イーダ!」を使ったことがある人に出会ったことがない。
会う人全員に聞いたわけではないけれど、
私が聞いた人はみな、困ったような顔をして首を振るのだ。
だからこれは、ごく限られた地域で、
ごく限られた期間にだけ使われていた幻の言葉なのではないかと(おおげさ)
思っていて、そして忘れ去った。
ずいぶん長いこと忘れていた。
忘れていたことさえも忘れていた。
そんなときに、いきなり小説の中で
「イーダ!」
を見つけて、興奮した。

池井戸潤氏が、きっと子供時代に使っていたのだろう。
ほんとにどうでもいいことだけれど、
片付け物をしていたら、すっかり忘れていた昔のもの、
たとえば、集めていた香りのする消しゴムとか、
きれいな色紙とか、紙せっけん(もったいなくて使えない)を見つけたような
気持ちになった。