太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

頭と口がどんどん離れてく

2021-08-01 09:01:19 | 英語とか日本語の話
オリンピックの前のことだが、日本の高校生たちが、大型バス4台で職場にやってきた。
学校行事のひとつなんだろうけど、準備しなければならないことも多いこの時期に、よく来られたなあと驚いた。

100人近い学生が一度に店に入るので、店内は押すな押すなの混みよう。
ツアーバスは、似たような時間に重なって来るので、職場がそういう状態になるのはいつものことで、
試食のフロア内で立ち止まっておしゃべりしたりしている人たちを、他の人たちが試食できるように、うまく流れさせなければならない。

フロアは日本の高校生で大盛況。
「シロ、立ち止まらないで順に動いてくれるように日本語でアナウンスしてくれるかなあ?」
マネージャーが言う。よし来た。私の出番だ。

私は少し高い位置に立って、「はーい、みなさーん!」と言った。


が、そのあとの言葉が出てこない。


頭の中では、だいたい文章ができつつある。

「試食を取ったら、他のお客さまのために立ち止まらないで進んでください」

それが、口からするすると出てこないのだ。
日本語なら、文章を作らなくても自然に、言いたいことが口をついて出てくるはず。
友達とのおしゃべりなどは問題ないのに、改まって何かを話す、となるとそれができなくなる。
いったん声をあげたことで、高校生のみなさんの視線は私に集まり、緊張が増してますます混乱。
結局私は、

「動いてください、止まらないで、他の人が入れるように」

主語述語が英語文の、しどろもどろの日本語を尻すぼみに言っただけだった。


これはさすがにショックだった。
同僚たちは「さすがシロだね」なんて言うが、私がどんなお粗末な日本語を話したか彼らは知らないのだ。
日本語の本を毎日読み、ブログを書き、LINEでチャットしている。
でも、猫たちに向かって日本語を話すだけでは、ちゃんと話をする能力がさびてくる。

ハワイに来た頃、私は頭の中で英作文をしてから英語を話していた。
だから会話についてゆけず、無口な人になった。
それが今はどうだ。
英語を話すとき、単語しか出てこなくても通じれば良いと思っているから、私は何も準備しなくなった。
その代わり、ちゃんとした日本語を話すときは、しっかり準備をしないと言葉が出てこなくなった。

こんなとき、いつも思うことだが、
さびつく日本語のスキルを、英語がカバーできているわけじゃないということだ。
英語のスキルはとっくの昔に頭打ち。
だから私の危機感は、ちょっと笑えないぐらいなのである。