太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

フロリダのひと

2014-08-24 10:52:13 | 人生で出会った人々
フロリダの人 と私が勝手に呼んでいる日本人のお客様がいる。

80を過ぎた女性で、時々職場にいらっしゃる。

ハワイに来る前はフロリダに15年ほど住んでいて、

フロリダがどれほど湿気があって暑くて住みにくかったか、という話をしたのが最初だった。



家中の貴金属をみんな付けて来たんじゃ・・・という人はいるけれど

その人はそういうわけではない。

服装はカジュアルだけれど、どこかパリっとしていて、80過ぎの日本女性はしないような装いだ。

たとえば今日は、真っ白のサブリナパンツに、赤と白のピンストライプの、きっちりアイロンがきいた

カッターシャツ。

歩きやすそうな、でも老人靴ではない、しゃれた白いサンダル。

うっすらと紫が入ったメガネをして、ちゃんとお化粧もしている。

内側から、「豊かな感じ」がにじみでてくるような。



見えるたびに、少しずつ話をする。


日本で、外交官と結婚したのが最初で、そのあと離婚し、

アメリカ人と再婚した。

外交官時代は、いろんな国に住んで楽しかったけれども、気苦労も多かったこと。

アメリカ人と結婚してみて、夫にするならアメリカ人のほうがいいと思ったこと。

自分はフロリダよりもハワイがいいと思うけど、ご主人はフロリダに戻りたがっていること。

今はアラモアナ近くの、高層コンドミニアムに住んでいて、ワイキキの海が毎日眺められて癒されること。



けして饒舌ではなく、ほろりほろりといろんな話が出てくる。


「80過ぎたら、毎朝起きて、ああ今日も生きてる、と思うのよね。

ずいぶん自分勝手に生きてきたけれども、死ぬときばかりは自分勝手にはいかないわね」



10月に日本で同窓会があって、それに行きたいんだけどどうかしらね、と笑う。



フロリダの人に会うのを、とても楽しみにしている。

できることなら、1日中、彼女の80余年の人生を、じっくり聞きたいと思う。

私は自分が販売の仕事をするとは夢にも思わなかったけれど、

いろんな人に出会えるのはとても楽しいことだ。




「ここまで生きてわかったことって

私たちはなに一つ、抱えて死ぬことができないってこと。80年でたったそれだけ。

髪の毛1本だって、持ってゆけやしないのよ。そんなこと、若いときに考えたことなんかなかったけど」



私も、理屈としては知っている。

けれども、身にしみてそれがわかってはいないと思う。



今度、フロリダの人がみえたら、

この人生でよかったと思うかどうか聞いてみよう。

きっと、ちょっと目を見開いてみせて

「よかったもなにも、必死で生きてきただけよ」と言って肩をすくめるような気がする。







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ワタナベさん

2014-08-23 08:02:08 | 人生で出会った人々
近所の豪邸が売りに出ていると思ったら、すぐに買い手がついた。

隣家のブライアンの話だと、買ったのは中国人らしい。

(私はこれは郵便配達のスタンの情報だとにらんでいる。このあたりのことで

スタンが知らないことなどないんだから)


夕方、帰宅した夫が、「早く早く、ちょっと一緒に来て」と言う。

私の手を引きながら、

「今そこで中国の人の車を見たから、まだ家の中に入っていないかも」

売れた豪邸まで行くと、ご主人が車から出るところだった。

「ハーイ!こんにちは!自己紹介しようと思って」

ご主人はあわてて、両手を顔の前で振りながら

「No English,only chinese」

そして家の中にいる奥さんを呼んできた。

奥さんも中国人で、英語はペラペラ。私たちが自己紹介したいのだとわかると、

ご主人の顔はパアーッと明るくなった。

「なにか悪いことをしたんじゃないかって思ったみたいで。ごめんなさいねー」



私はいつも、夫のこういうところにドギマギする。



夫の前の職場のRUDYが亡くなったとき、RUDYを知らない私に

「まっさきに転校生に声をかけるやつっているだろ?RUDYはそういうやつなんだよ」

と言ったことがあったけれど、RUDYがそうであったように、夫もまたそういう人なのだ。



夫と知り合った頃、時々ワタナベさんの話をした。

仕事を得て、新しい街に越してきて、街の中をいろいろ探検していたときにワタナベさんと知り合ったそうだ。

ある日、車で走っていたら、「あ、ワタナベさんだ!」

車を停めて、私の手を引いてズンズンと歩いてゆく。


「ワタナベサーン!コンニチハー!」


そこに立っていたのは、ホームレスの女性だった。



ショックだった。


夫がホームレスを差別しないことにじゃなく、

私がホームレスを差別していたことに。

差別なんかしていない、と思っていたのに、私は思い切り差別していたことに気づいた。

夫は私の肩に手をおいて

「ケッコン、シマス。オクサン」と言った。

ワタナベさんは

「ああそうかね、あんたケッコンするんかね、それはよかった、おめでとう」

と言って笑った。

私の顔は引きつっていただろう。

夫はさりげなくワタナベさんの手に1万円札を握らせて、その場を去った。


「たくさんあげすぎたと思ってるでしょ」

車に乗ってから夫は言った。

図星だった。この人は私の心が読めるのか。それとも私は全部顔に出るのか?

「僕は金持ちじゃないけど、毎月お金が銀行に入ってくる。今は1000円あっても

パンと何かを買ったらなくなっちゃうでしょ」




夫は気が短いし、持病のウツもあるし、

感情をコントロールできないことがあるし、Fワードを連発するし、

人の好き嫌いがはっきりしているし、とにかく「まったくもう!!」というところがいっぱいある。


けれども、私には到底まねできないようなことをサラリとやる。

何かが、決定的に私と違う。

私はそういう夫を、尊敬と驚嘆とジェラシーが混ざった気持ちで、しみじみと眺めるのである。







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シナリオ

2014-08-21 20:41:41 | 勝手な映画感想
興味深い映画をみた。



「The adjustment bureau」


主人公マット・ディモンは政界に挑戦している若者だ。

選挙活動がうまくいって、いざ投票日の近くになると、酔って暴力事件を起こしたりして

落選を繰り返している。

次の選挙が迫っているときに、ある女性と出会い、二人は強烈に惹かれあう。


複数の、山高帽をかぶった男達が主人公を追っていて、

彼らは主人公をつかまえ、女性の電話番号が書かれている紙を燃やしてしまう。


実は彼らは天使で、主人公が予定通り政治家として成功し、名を成すために奔走しているのだ。

その女性とは、過去生で何度も巡り合う予定でいながら、そうなることはなかった。

ただ今世では、互いに別のシナリオを持って生まれており、巡り合うべきではなかったのが

ちょっとしたアクシデントで出会ってしまったのだった。



映画の中で、反抗しまくる主人公に、ようやく「自由意志」が与えられることになったのもつかのま

すぐにそれが剥奪される。

そのことに猛烈に反論する主人公に天使が言う。

「オレの自由意志はどうなったんだよ!」


「我々は人間に自由意志を与えてきた。そうしたら人間たちはどうした?

万里の長城を創ったり、最初は調子がいいけれど、そのうち殺し合いを始める。侵略しあう。

それで再びわれわれが介入して、軌道修正する。

そして、猿たち(人間)もそろそろ自分たちでやっていけるだろうと、一歩下がってみていると

また戦争を始める、大量虐殺する、自然を破壊しまくる」




天使たちがCIAのようで、天使らしくないのがいい。

また、天使のくせに、罪悪感とか持ってる天使がいるのもいい。




これは小説を映画化したもので、きっと作家は誰か(天使たち?)に書かされたんじゃないだろうか。

見れば見るほど、ほんとうに私たちの人生はこうなっているように思えてくる。




今から9年前、夫は「何の理由も保障もなく」仕事も辞め、家は人に貸し、車を売り、

特大スーツケース2個を持って日本に行った。

日本語を話せず、コネもない。

日本に行かないほうがいい理由なら、腐るほどあったけれど、夫は行動した。

『日本に行けぇ~、日本に行けぇ~~』

あけてもくれても、その言葉が心を占領して、

ずいぶん言い返して反抗していたのだというが、とうとう根負けしたのだった。

「アーッッうるさい!わかったよ、行きゃいいんだろ、行きゃぁ」

ま、そんな感じ。

実際日本に行ってみたら、

仕事を得て、友人を得て、結婚相手まで得て、日本での生活はなにもかもがスムーズに行って怖いぐらいだったという。




「あのとき、きっと天使たちがこんなふうに奔走していたんだろね」




それは正しい道じゃない、という方向に行きそうなとき

主人公が電話をかけたくても繋がらない、タクシーを拾いたくても拾えない。

なんだか物事がうまくいかない、というときには、それは道から外れかけているというサイン。

というのはわかるんだけど・・・・・



この人生での自分の使命とはなんだろう。

わたしは誰だろう。



スピリチュアルなことに顔を突っ込んでいくと、そこに突き当たる。

右も左もわからなかった頃は、何も望まず、流れついたところが私の幸せの場所、と思ったこともあった。

道を外れていたら、ただちに正しい道に戻ってがんばります!という気持ちだってあった。

しかし、今は違う。

使命があるなら、それは尊重するけれど、

生身の私がやりたくないことは、やりたくないと思う。

私がほんとうにやりたいことをやりたいと思う。




この映画では、まさに主人公がそこに行き着く。

いったんはシナリオを受け入れるが、やはり主人公は自分の気持ちをごまかせない。

天使たちはどうするか。

また、天使たちの上司であるチェアマン(神)はどうするか。



自分と重ねながら、つい引き込まれてしまう映画である。







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情報外

2014-08-21 07:43:17 | 日記
小学校低学年の頃、ある朝、普通に学校に行ったら、

みんなリュックサックを背負っていて、ランドセルを持っているのは私だけだった。

その日は遠足だったのに、私はそれを知らずにいたというわけだ。

そのあとどうしたのか、まったく覚えていない。

自宅から学校まで徒歩5分だから、戻って支度したのか、休んだのか・・・




私は、自分が「なんだかずれている」と認識するようになったのは大人になってからだ。

それも30もいいとこ過ぎてから。

流行に疎い。

情報に疎い。

普通にみんなと同じように暮らしているのに、なぜだか私に入ってくる情報が少ない。

つまり、アウト オブ インフォメイション。情報外。


小学校1年の親子面談のとき、担任の先生に

「シロちゃんにもっといろんなものを見せてあげてください」と言われて

顔から火が出そうだったと母が言った。

父は出かけるのが大好きな人で、毎週のように家族を連れていろんなところに行ったし

長い休みには泊りがけの旅行にもよく行ったというのに、

私はどこに連れていっても、自分が興味のあるものしか目に入らなかったのであろう。

それはたとえば、車の窓から外を眺めながら、赤い車が何台通ったかとか

学校で覚えた歌を熱唱するとかいったことだ。




日本人の同僚たちは、無料の日本語版の情報誌や新聞を欠かさず読んでいて

ときどき私の分も持ってきてくれるのだが

目がサーっと紙面をなでてゆくだけで、ほとんど頭に入ってこない。

こんなに読書は好きなのに、興味のないものはまったく読めない。



私が情報の外にいるのは、

あまりテレビを見ないとか新聞を読まないとかいった理由だと思っていたけれど

私は子供のころからずーっとそういう傾向にあったのだ。

私はやっぱりこれからも情報の外で

人々にあきれられながら生きてゆくのだろう。







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死語

2014-08-20 08:09:56 | 日記
職場で地元のお客さまが、日本の雑誌を持ってきて

ZAKKA という単語を指差して

「これはどんな意味?」と聞かれる。

私が学校で英語を習ったとき、雑貨は「SUNDRY」だったのを

なぜか覚えていたので自信たっぷりに

「SUNDRY」

と言ったのだが、お客様は理解できない。

イントネーションやアクセントを変えつつ「SUNDRY」と言ってみても

いっこうにわからない。


結局、他の言葉を駆使して雑貨を説明した。

アメリカには日本でいう「雑貨」のカテゴリーはないと思う。

日本で人気の雑貨屋さんは、アメリカではギフトショップに近い。

でも、近いだけで、日本の雑貨屋のような魅力はない。

カレンダーから家具から植物から、洋服、アクセサリー、インテリア小物まで

夢のように集まっている、あのワクワクする雰囲気は、絶対に「雑貨屋」だけだ。



お客様が帰ってから、地元の同僚に聞いてみた。

「SUNDRYって知ってるよね?」

「えー、知らない」

もう一人の同僚にも聞いたが

「聞いたことがない」

というつれない返事。



携帯電話の辞書で「雑貨」をひいてみると、

まっさきに SUNDRY と出てきたじゃないか。

次に  MISCELLANEOUS(ミスレ二アス)。


「ほらほらほら。1番最初にSUNDRYが出てきてるじゃん!!」

鬼の首をとったかのように威張ってその画面を見せた。

しかし彼らは

「でも知らないものは知らないものー・・・」


「じゃあ、Miscellaneousならわかる?」

「ああ!それならわかる」

直訳すれば、「いろいろ」とか「雑多な」とか。



「私が学校で英語を習ったときにはSUNDRYだったんだけどな」

「それって何年前のこと?」


「うーん・・30年以上前」


「・・あぁ それは無理でしょ・・・」

「ぼく、ぜーんぜん生まれてないし」

「うるさーーーーーーいッ!!」




ふん。

携帯電話の辞書まで古いってか。









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