太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

体内GPS

2015-03-25 11:15:58 | 日記
プラバーという名前の鳥がいる。

彼らは普段は群れず、年に1度集まって、一斉にアラスカに飛び立つ。

数ヶ月後に彼らは、以前と全く同じ場所に戻ってくる。

一体彼らはどうやってアラスカの場所がわかるのか。

ハワイに戻る経路も、以前いたのと全く同じ場所のありかも、

どうしてわかるのだろう。


プラバーだけじゃない。食べ物を集めている蟻にしても、よく迷わず巣に戻れるなあと思って眺める。


夫の運転で出かけるとき、次の目的地に移動するのに、彼は逡巡することなく

効率よく道を選んで走る。

私の場合、そうはいかない。

次の目的地と、現地点の位置関係をまず明らかにし、

その2地点を繋ぐ、私が知っている道を探し出したら、

今度はその道に辿り着くにはどうしたらいいか、を考える。

車を発進する前にこれら全ての作業をやるのだが、これがまた、電話回線のコンピュータのように遅い。


これは夫がハワイで生まれ育ったから、土地勘があるというのではないと思う。

だって日本にいたときも同じだったんだから。



先日、妹がハワイに来るにあたり、いろんな所に連れて行くのに予習をした。

どこにいるかわからなくなったら、スマートフォンにあるアプリで聞けばいいよ、と夫が言う。

じゃあ、それも練習しとくか、と

「ここは何処ですか?」

と電話に向かって聞いてみたが、冷たい女性の声で

「聞き取れませんでした」と言う。

声を張り上げて「こーこーはーどーこーでーすーかあーーッ」

と繰り返す私を、友人が腹を抱えて笑っていた。

「なんだか気の毒だヮーー、ひーッ」

電話の女性は残念そうてもなく、わかりません、と繰り返す。

結局、英語で言ってようやく通じたのだった。

日本語仕様にしてあるのに。

妹と出かけた時に、電話の女性のお世話になることはなかったけれど、

もし電話に向かって怒鳴っている私を誰かが見たら、激しく同情して助けてくれたかもしれない。


体内にGPS機能がないならないで仕方がない。

さっさと車にGPSをつけるとか、電話のその機能を使えばいいじゃないか、という話だが

あれはどうも好きじゃない。ここが私のめんどくさいところ。

自由行動のない団体ツアーに参加するとラクだけれど、

ただ場所から場所に連れて行かれるだけで、その国や街のことがわからない。

時間はかかっても、頭の中でお粗末な地図を組み立てつつ、

一人で行ける場所が増えていく楽しみや、バラバラだった地図がカチリと何処かでハマったときの

あの喜びがたまらない。


かれこれ、30年近くも車を運転している。

30年たってわかることは、どうも方向音痴は良くならないらしい、ということである。




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夜の合唱

2015-03-24 23:47:28 | 不思議なはなし
我が家は、幹線道路からかなり離れているので

昼間は鳥の声と、近所のお寺の鐘の音しか聞こえず

夜は虫やカエルの声、雨の音、風に揺さぶられた樹々がたてる葉のこすれる音ぐらい。

例外は、無駄にけたたましいクジャクの雄叫びだけども。


いつか記事にしたかもしれない。

時々、合唱のような声が聞こえてくる。

歌ではなく、発声練習のような声である。

寝しなの、しかも決まってすぐに寝付かれないときに、その声がする。

5秒ぐらい音を伸ばして、フッと止まる。数秒あけて、また5秒ぐらい。

いつも同じひとつの音程。

ところが、夫には聞こえないらしい。

幹線道路の車の音じゃないの、と言うが、絶対にそうじゃない。



子供の頃、近所の高校から、応援団の発声練習が風に乗って聞こえてきた。

最初はそれが何かわからず、気味が悪かった。

人の声だとわかってからも、どこからともなく流れてくる合唱は、私を落ち着かない気分にさせた。


月明かりだけの寝室で、眠りに入るきっかけを逃したまま

今日もその合唱を聞いている。

記憶の中の応援団の発声練習がそれに重なり、あのときの気持ちまで蘇る。

この合唱は、応援団のそれのように野太い声ではなく、

女性か、声変わりする前の男の子のような細い声で、聞いていて落ち着かない気分にはならない。



雨が降り出すと、それは聞こえなくなった。

雨脚がゆるやかになると、また聞こえてくる。

一つ気がついたことがある。

この声が聞こえている夜は、クジャク達が静かなのだ。


我が家の庭は、こんもりとしたジャングルに繋がっていて(もちろんジャングルはうちの土地じゃない)

その中から聞こえてくるのではないかと、最近思うようになった。

私よりよっぽど敏感にできていそうな夫に聞こえないのはどうしてだろう?


夜、窓から見えるジャングルは、ひたすらの暗闇。

雨が止んで、低くカエルが鳴きだした。

ジャングルに面した窓から、あの合唱がはっきりと繰り返し聞こえてくる。

声の主をあれこれ思い描きながら、いつのまにか眠りにつく。



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心を洗いたくなったとき

2015-03-24 06:57:11 | 日記
もし、YOU TUBE を見る機会があったら、

ぜひチェックしてほしいものがある。

検索する窓に、



inspirational video you can be a hero too



と打ち込むと、たくさんの動画が出てくる。

たぶん、今ならその1番上にあがってきていると思う。

作者が


Motivation US


だったら、まちがいない。



タイで暮らすひとりの青年の日常を描いた、たった3分のストーリーだ。

心が洗われるような、という表現がぴったりな、心にしみる映像。

夫が仕事で大きな会議に行ったときに、そこでみんなで観た映像のひとつらしい。



心を洗いたくなったら、おすすめ。

英語の字幕だけれど、シンプルな英語なのでわかりやすいと思う。







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とんちんかん

2015-03-22 11:52:48 | 人生で出会った人々
国語辞典を買ったお客様がいた。

私の母ぐらいの年齢だろうか。日本人の女性だ。


本の補充をしていると、その方が隣に立っていらして、

「日本の本がこんなにたくさんあるのねぇ」

と言った。

「私はメインランド(アメリカ本土)に住んでいて、そこでは日本の本が売ってないのよ。

この国語辞典もね、私が欲しかったものがあって、ほんとうによかった」

やわらかい表情で、ゆっくりとしたしゃべり方は、私の母のようだ。


「娘が5年前にこちらに来ましてね。その娘が病気になってしまって、

それで様子を見に来たんです」


「そうでしたか。それはご心配ですね」


「ええ。でももうダメみたいで」


返す言葉もない私の顔をおだやかに見ながら、その方は言った。


「菌にね、やられているんです。手術をしても助かるかはわからない。

ただ手術をすると、体内の血液を入れ替える作業を週に何回もやらなくてはならないそうで

それがとても辛いんだそうです」


「・・・・」


「娘が、手術は受けたくないと言うんです。親が親の権利をもって手術を受けさせるには、私たちがハワイに

住んでいないといけないんだそうですよ。でも本人は嫌だというものを、ねえ」


「手術をしないと・・」


「そうです。手術をしないとだんだん弱っていくだけ。手術をしても、助からないかもしれない」


そう言うと、その方は本棚を見上げて

「なにかおすすめの本はあるかしら」

「どんな本がお好きですか」

「そうねえ。時代物よりは現代ものがいいかしら。そうだ、なんとかいうお医者さまが書いた本、おもしろかった」

「じゃあ小説よりは、エッセイみたいなのがいいですね」

心があたたかく軽くなるような本を数冊、私は選んでみた。



「ああ、これはいいわ。うんうん、きっと楽しいわね」


その方は微笑んで、そして

「25日までここにいます。その間に娘が死んでしまったら、もう来ることはないかもしれません。

でも死ななかったら、きっとまた来ることになるでしょうね」


と言った。

子供が自分よりも先に死ぬということが、どれだけのことなのか、私には想像もつかない。

かなしいとか、辛いとか、そういった言葉では言い表せないことに違いない。



私は思わず、その方をきつくきつく抱きしめた。

泣かないようにするのが精一杯だった。

この方が泣いていないのに、どうして私が泣けようか。



「あらあら・・・ありがとう・・・」

その方は、最初は驚いて、でもすぐに強く抱きしめ返してくれた。




この人に、すべてのよいことが、できるだけたくさん起こりますように。

かみさま、この人に、できるだけたくさんの天使を派遣してください。





「ご家族は、こちらに?」

その方は私に聞いた。



「いえ、日本にいます」

「からだを大切にね。それがいちばんの、しあわせなこと。誰にとっても」



つらい人がいたら、力になりたいと思う。

0.05%でも、つらい気持ちが減るような何かができたらいいと思う。

けれども、とても私の手におえないようなこともたくさんあって、

なにもできない自分がもどかしく思う。

子供の頃からそうだった。

私はうまく、人を慰めることができない。


こんな状況にあって、国語辞典を買うだとか、本を読もうという気持ちになれるまで

どれだけのものを乗り越えてきたのだろう。




「気晴らしに、また寄ってください」


「ありがとう」


その方は、そんなとんちんかんなことを言った私を笑顔で包み込んでくれた。






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カイルア

2015-03-21 08:45:24 | 日記
ようやくハワイらしい気候になった。

空は晴れて、日差しが強く、風がからりと乾いて心地いい。



平日休みの今日は、家にいるのがもったいないようで

カイルアに出かけた。


家からカイルアの街までは車で20分ほど。

ホノルルに行くよりは近いし、街全体がのんびりしている。

つい最近、TARGET という店がオープンした。

日本でいうなら、なんだろう。ホームセンターを、きもーーーちオシャレにした感じ。

アウトドア、インテリア用品も化粧品も、おもちゃも洋服もDVDも食料品もある。

私はTARGETで下着を買うのが好き。

帽子と見まごう大きさのブラが並ぶのは他の店と同じだけれど、

私のサイズのブラも結構種類があって、それほど高くもない。



TARGETのあとは、カレーチキンシーザーサラダ が食べたくなって

カラパワイマーケットへ行く。





カイルアビーチパークの隣にあって、店の奥にはデリもある。

このデリにある、カレーチキンシーザーサラダ が絶品。




どうやって作るんだろう。

チキンとセロリ、何種類かの野菜と、ドライクランベリー、ピーナッツがほのかにカレー味であえてある。

1パウンドで9ドルちょっと。

「半パウンドじゃ少ないけど、1パウンドは多いんだよね」

と言うと、愛らしい顔のおにいさんが、

「じゃ、少な目の1パウンドで入れてみるよ、これでいい?」

隣のバクラバがおいしそうだったので、それも買う。



バクラバ

ギリシャのデザートで(たしかそうだったと思う)、数種類のナッツを飴でからめたものを

パイで包んで焼いてある。つまり、かなりの高カロリーデザート。

家に帰ったらコーヒーを淹れて、これをランチにしよう。



カイルアは、最近日本人の旅行者の姿を見かけることが多くなった。

ワイキキの喧騒を避けてくるのか、ワイキキを知り尽くしたのか。



私がまだ仕事をしていなかった頃、仕事をしたいからではなく

そろそろ仕事をしたほうがいいのではないか、という「恐れ」の気持ちで仕事を探していた。

夫の母が、カイルアにできたおしゃれなキッチン雑貨のお店で、日本人の店員は必要かどうか聞いてきてくれたことがあった。

すると、日本語が話せる人がいたら便利だというので、応募用紙までもらってきた。

応募用紙を前にしながら、しかし私は申し込まなかった。

そこで働くことについて、ネガティブな言い訳ばかりが出てきて、

どうしても行動ができなかったのだ。


その数ヵ月後に、それほど深く考えもせず、思いついたように今の職場に応募した。


そのキッチン雑貨の店は、昨年の秋に店をたたんでしまった。

もし応募して採用されていたら、今は無職になってしまったところだった。



次の入居者がいない、その店の跡を車で通り過ぎながら

どんなことも「恐れ」の気持ちから始めてはダメなんだなと思い知る。

こうなりたくないから。

こうなると困るから。

こうすべきだから。

何かをやるときにそんな言葉が出てきたら、それはやめたほうがいい。

こうしたいから。

それが好きだから。

こうなりたいから。

その気持ちを確かに自分がもっているか、それはとても大事なことだと思う。








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