ハッチがいた日常

夫は病死、仕事も辞めて被災猫ハッチと暮らしたけれど、10年で終わってしまった。これからは本当の一人暮らしの日々。

朝日歌壇9月6日

2020年09月06日 17時20分05秒 | 短歌

永田和宏選

殺したことも殺さなかったことも言わず将校の父いのちを畳む    霧島市 久野茂樹

あの頃に母であったら我もまた子を送りしか激戦の地に       東京都 細井恵子

 ともに終戦記念日の8月に詠んだ歌ですね。一首目、本当は戦争体験を証言してほしかった。言わなければ、誰も知らないままになってしまうのに。墓場まで持っていかなくてはいけないことだったのでしょう。戦争は人殺しですから。2首目、社会全体が、今のコロナ感染者を非難するような「同調圧力」があったし、そもそもの教育が全体主義で自由なんかなかった時代でした。もしかして、今も同じような社会だったりして、怖いですよ。与謝野晶子はそれでも、戦地に行く弟に「君死に給うことなかれ」と詠みました。強い意志を持った歌人でした。誰だって、生きて帰ってほしいのは当たり前です。国が国民のためにあるのであって、その逆はおかしいでしょう。

馬場あき子選

祭りなく踊りも花火も人もない静かな静かな父の初盆       岩沼市 相澤ゆき

 お盆に何もできない今年、本当におつらいと思います。このコロナ、いつになったら終息してくれるのでしょうか。最近ではマスクしていない人も増えたし、店に入るのに消毒しない人も多くて、このままで大丈夫なのかと不安です。

佐佐木幸綱選

古書店にネーダーコールン・靖子見つけたり安楽死せし若き歌人  長岡市 唐沢美也子

 初めて知りました。オランダで日本人初の安楽死をしたという女性のこと。50代になったばかりくらいの女性でした。実は、安楽死をテーマのNHKスペシャル、去年放送したものが衝撃で、思い出してしまいました。スイスは、海外からの安楽死も受け入れているのです。難病で、どんどん体が動かなくなる、天井を見つめるだけの激痛を我慢し続ける人生はもう耐えられないと訴え、姉妹が受け入れたのでした。自分らしく(自分のままで)静かに死んでいくことを選択した。安楽死は、ある意味、自殺ですよね。どうしようもない絶望、乗り越えられない障害。安楽死は認めるべきかどうか・・。もちろん他殺は絶対にダメですが、ある意味自殺は、許されるのかも・・・。いや、わからない。ただ、誰もが死ぬことはわかっています。難しい問題です。

高野公彦選

もてなして匿うように子と過ごす帰省拒めば悔いを残さむ     安中市 岡本千恵子

 東京都民だけ移動自粛のままだったし、GoToキャンペーンにもはずされ、帰省しても近所の非難を浴びる、自粛警察に見つかったらどんな目に合うかわからないなんて、まるで第二次世界大戦のドイツでのユダヤ人みたいじゃないですか。こんなことは、あってはならないはず。なんとかリモートで会話をして、総菜は冷凍してクール便で送るとか、いかがでしょうか。先日は友人がうちに来て、久しぶりにもてなししましたが、彼女は実家から送ってきたかぼちゃの煮物を持参してくれて、おいしかったなあ。私は30代で母を亡くしているから、おふくろの味はもうずっと前から味わえていませんでした。だから、とってもうらやましい。しかたなく、ファミマのお母さん食堂で我慢。

 昨日、今日とばたばたしていて心にゆとりがなかったからでしょうか、ひっかかる歌があまりなかったのです。短歌を鑑賞するにも、わさわさしていてはだめですね、反省してます。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする