TINKERBELL BLOG

茨城県取手市「美容室アトリエティンカーベル」ティンカーベルのスタッフを身近に感じていただければ嬉しいです

京都一周トレイル また夜が来た編

2017年04月23日 | Weblog
街中を歩き続け、すっかり山は終わったと思い込んだ僕は、せっかく補修したストックを再び折って、しまい込んでしまいました。折らないとザックに入らなかったからです。

ところがしばらく行くと、ルートはさらに大通りを外れて、上へ上へと導かれます。
やがて舗装路ではなくなり、完全に山道となりました。
早とちりしたな…。
あぁ… ストックが欲しい。

これが僕の完全なる理解不足での失態です。ザックリとしか把握していなかった僕が悪いのです。

この先どのくらい山を歩くのか分かりませんでしたし、知りたくありませんでした。
とにかく今はひたすら歩くのみです。

コース全体の標高グラフを見たとき、最後の最後まで平坦にならなかったのを思い出しました。
このとき京都一周トレイルは立派な山岳トレイルだとはっきり認識しました。
でも、ほぼ全部が山岳地帯で、それを80㎞歩くのだと分かっていたらビビってここまで来なかったかもしれませんね。

かなり登って来たところで道が分からなくなりました。
標識はあるのですが、GPSがうまく働きません。一度戻ってみて辺りを見回しますが、よく分かりません。
仕方ないのでとりあえず上へと歩みを伸ばしてみます。
GPSで見るとどうやらルートから遠ざかっているようです。とすると、あっちの道だな…。
せっかく登ってきた道を下り、先ほどの分岐点を別の方向に向かいます。

GPSの軌跡はルートをたどり始めました。
おそらく思考回路も狂い始めたのでしょうね。すでに陽は傾ききって薄暗くなってきました。
この時スタートしてから19時間が経過していました。

それからはただひたすら登ったり下ったりの繰り返しです。時折舗装路に出されますがすぐにまた山道に導かれます。
疲労感がもの凄いです。
同じような景色が現れてきて『ここさっき通ったぞ』なんて思うようになりました。GPSが軌跡を刻んでいるので、同じ道を歩いていないのは分かっているのですが…。

辺りはまた完全に闇の中へ吸い込まれました。
もう誰もいない山中をさまよう自分。わけが分からなくなったり、理解力が不足してきたりします。
そして遂に1本だけ残ったストックを出してみました。
『おお、少しは楽だ』
自分の早合点でまだ使えるポールを破棄してしまった後悔だけが思い出されます。

突然山道から舗装林道に出ました。
なぜか車がたくさん停まっていました。近づいてみると夜景スポットでした。
宝石をちりばめたような盆地の夜景は素晴らしかったです。家族連れやカップルが楽しそうにしている中、場違いな格好の僕がいました。
写真を数枚撮って、その場を離れます。

再び暗闇へと導かれます。
時々街の灯りが見えますが、またこんなに高く登らせるのか…って思います。
山の裏側へ下ろし、脇を通ってまた表側に出させる… そんなルート取りをさせる憎い演出です。
すごいです。狂いそうです。

スタートしてから24時間がたったころ、軽い幻覚現象が出てきました。
女房が心配してくれて『今夜泊まるところあるの?』と聞いてきます。
はっきり言って今はそんな事を考える余裕はないです。
『大丈夫、放っておいて』と返事します。いざとなったら地べたでも寝られるから…。
もう歩き続けることで精一杯になりました。

ここで初めて残りのルートを確認しました。
まだこんなにあるのか…。
ちょっと身体を横にしないとダメだな…。肩から背中、腰にかけてバキバキになってしまいました。骨と骨の間が詰まってしまい、きしんでいるようです。

どこだかわからないお寺の入口で遂にザックをおろし、身体を放り投げて仰向けに寝転んでしまいました。


続く。
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京都一周トレイル 延暦寺まで来たぞ編

2017年04月23日 | Weblog
沢の増水で足場が無かった場所で、ストック2本突きで飛び越えた瞬間…

あっ!

片方のストックがバキッといって折れてしまいました。
ああぁ、カーボン製の軽くて高価なやつが… トホホ。

さらにその瞬間足先が水面に触れ、水を蹴る形になり靴を濡らしてしまいました。
急いで脱いでみると靴の中は何とか大丈夫です。ところが靴下が濡れてしまいました。

濡れてしまうと足がふやけて靴擦れになったりしますし、何よりも不快感ですね。
ここで念のため持ってきた靴下に交換し、ついでにインソールも交換しました。土踏まずがグッと盛り上がって青竹踏み効果があります。
濡れた靴下はザックに引っかけて干しながら歩くことにしました。

折れてしまったストックを、アロンアルファとガムテープで補修しました。使用に耐えられるレベルまで補修することが出来ました。
以前、山仲間が『アロンアルファけっこう使えます』と言っていたので修理用品袋に忍ばせておいたのです。役に立つ時が来ましたね。
旅館で出てくるような歯ブラシセットの歯磨きチューブ並みの小さなサイズのアロンアルファが100円ショップで売っていたので、それを買いました。確か3本ほど入っていたと思います。

さらにアップダウンを幾度も幾度も繰り返します。
気温が上がり暑くなって来ました。
ズボンの膝のジッパーを外して半ズボンにし、サポートタイツを履きました。
シャツも半袖に交換してさっぱり。
そんな事をしながら傘とカッパを乾かしておきました。太陽ってすごい、けっこうあっという間に渇きました。
この時間が一番長く休憩してたかな。だいたい15分ぐらいかかりました。

一度谷あいに向かって下り、次の山塊へ登り返します。
いよいよ比叡山に向かって登って行きます。

この辺りから登山者とすれ違うようになりました。
なぜか皆さんノーストックです。
京都の人はストック突かないのがルールだったりして?それともストック突いたら罰金あるとか?

ルールといえば、京都はゴミが落ちていません。
普通路肩や隅っこの方には紙くずや空き缶、吸い殻などがちょっとは落ちていたりしますよね。
それが街にも山にも落ちていないのですよ。素晴らしいです。
ああ… 自分の地域のだらしなさが恥ずかしいです。

やがてお坊さんスタイルの方が登って来ました。
あの重厚な着衣ではなく、お坊さんが着るジャージ的なあれです。
作務衣(さむえ)っていうのかな?

ジャージスタイルの生徒たちを連れていました。
すぐ後ろについてハイペースで登ってきたのはぽっちゃりした女の子でした。そしてお決まりの『こんにちは』の連呼です。30回ぐらい挨拶しました。
だいぶ離れてラストに登ってきたのは、いかにも運動が得意そうな体つきをした男子生徒でした。見た目で判断してはいけませんね。

この時点でスタートしてから13時間が経過していました。
なぜかとても快調に歩けています。やはり日中は歩きやすいですね。

比叡山延暦寺には若干陽が傾き始めた頃に着きました。ほとんど人がいないので、ベンチでザックを広げ、パンを食べながら食料出しとペットボトルの交換をしました。

延暦寺までは下界から車で来れるようです。
また、ロープウェイやケーブルカーでも来れますが、降りてからけっこう歩きます。金髪のカメラ少年が息を切らせて歩いて来ました。

ロープウェイ乗り場に着くとそれなりの数の人がいました。
もちろん歩いて降りて行くのですが、標高差は700mぐらいあります。
ちなみにこのトレイルの累計標高差は4000mをはるかに超えます。海抜0mから富士山登るよりもあるのです。

若干膝に来てる感はありますが、余裕はありますね。まだ行けます。
完全に下山すると、目の前には京都盆地が広がっていました。
それからは京都の街中を歩き続けます。いきなり都会です。

何を思ったか、コースの山全てを歩った気になってしまいました。
女房に『下山したようです』とまで連絡してしまいました。
折れたストックを処分するかのごとく、完全にバラしてザックにしまい込んでしまいました。

しばらく進むとルートは大通りを外れて行きます。

は?登るの?


続く。
コメント (1)
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