街中を歩き続け、すっかり山は終わったと思い込んだ僕は、せっかく補修したストックを再び折って、しまい込んでしまいました。折らないとザックに入らなかったからです。
ところがしばらく行くと、ルートはさらに大通りを外れて、上へ上へと導かれます。
やがて舗装路ではなくなり、完全に山道となりました。
早とちりしたな…。
あぁ… ストックが欲しい。
これが僕の完全なる理解不足での失態です。ザックリとしか把握していなかった僕が悪いのです。
この先どのくらい山を歩くのか分かりませんでしたし、知りたくありませんでした。
とにかく今はひたすら歩くのみです。
コース全体の標高グラフを見たとき、最後の最後まで平坦にならなかったのを思い出しました。
このとき京都一周トレイルは立派な山岳トレイルだとはっきり認識しました。
でも、ほぼ全部が山岳地帯で、それを80㎞歩くのだと分かっていたらビビってここまで来なかったかもしれませんね。
かなり登って来たところで道が分からなくなりました。
標識はあるのですが、GPSがうまく働きません。一度戻ってみて辺りを見回しますが、よく分かりません。
仕方ないのでとりあえず上へと歩みを伸ばしてみます。
GPSで見るとどうやらルートから遠ざかっているようです。とすると、あっちの道だな…。
せっかく登ってきた道を下り、先ほどの分岐点を別の方向に向かいます。
GPSの軌跡はルートをたどり始めました。
おそらく思考回路も狂い始めたのでしょうね。すでに陽は傾ききって薄暗くなってきました。
この時スタートしてから19時間が経過していました。
それからはただひたすら登ったり下ったりの繰り返しです。時折舗装路に出されますがすぐにまた山道に導かれます。
疲労感がもの凄いです。
同じような景色が現れてきて『ここさっき通ったぞ』なんて思うようになりました。GPSが軌跡を刻んでいるので、同じ道を歩いていないのは分かっているのですが…。
辺りはまた完全に闇の中へ吸い込まれました。
もう誰もいない山中をさまよう自分。わけが分からなくなったり、理解力が不足してきたりします。
そして遂に1本だけ残ったストックを出してみました。
『おお、少しは楽だ』
自分の早合点でまだ使えるポールを破棄してしまった後悔だけが思い出されます。
突然山道から舗装林道に出ました。
なぜか車がたくさん停まっていました。近づいてみると夜景スポットでした。
宝石をちりばめたような盆地の夜景は素晴らしかったです。家族連れやカップルが楽しそうにしている中、場違いな格好の僕がいました。
写真を数枚撮って、その場を離れます。
再び暗闇へと導かれます。
時々街の灯りが見えますが、またこんなに高く登らせるのか…って思います。
山の裏側へ下ろし、脇を通ってまた表側に出させる… そんなルート取りをさせる憎い演出です。
すごいです。狂いそうです。
スタートしてから24時間がたったころ、軽い幻覚現象が出てきました。
女房が心配してくれて『今夜泊まるところあるの?』と聞いてきます。
はっきり言って今はそんな事を考える余裕はないです。
『大丈夫、放っておいて』と返事します。いざとなったら地べたでも寝られるから…。
もう歩き続けることで精一杯になりました。
ここで初めて残りのルートを確認しました。
まだこんなにあるのか…。
ちょっと身体を横にしないとダメだな…。肩から背中、腰にかけてバキバキになってしまいました。骨と骨の間が詰まってしまい、きしんでいるようです。
どこだかわからないお寺の入口で遂にザックをおろし、身体を放り投げて仰向けに寝転んでしまいました。
続く。
ところがしばらく行くと、ルートはさらに大通りを外れて、上へ上へと導かれます。
やがて舗装路ではなくなり、完全に山道となりました。
早とちりしたな…。
あぁ… ストックが欲しい。
これが僕の完全なる理解不足での失態です。ザックリとしか把握していなかった僕が悪いのです。
この先どのくらい山を歩くのか分かりませんでしたし、知りたくありませんでした。
とにかく今はひたすら歩くのみです。
コース全体の標高グラフを見たとき、最後の最後まで平坦にならなかったのを思い出しました。
このとき京都一周トレイルは立派な山岳トレイルだとはっきり認識しました。
でも、ほぼ全部が山岳地帯で、それを80㎞歩くのだと分かっていたらビビってここまで来なかったかもしれませんね。
かなり登って来たところで道が分からなくなりました。
標識はあるのですが、GPSがうまく働きません。一度戻ってみて辺りを見回しますが、よく分かりません。
仕方ないのでとりあえず上へと歩みを伸ばしてみます。
GPSで見るとどうやらルートから遠ざかっているようです。とすると、あっちの道だな…。
せっかく登ってきた道を下り、先ほどの分岐点を別の方向に向かいます。
GPSの軌跡はルートをたどり始めました。
おそらく思考回路も狂い始めたのでしょうね。すでに陽は傾ききって薄暗くなってきました。
この時スタートしてから19時間が経過していました。
それからはただひたすら登ったり下ったりの繰り返しです。時折舗装路に出されますがすぐにまた山道に導かれます。
疲労感がもの凄いです。
同じような景色が現れてきて『ここさっき通ったぞ』なんて思うようになりました。GPSが軌跡を刻んでいるので、同じ道を歩いていないのは分かっているのですが…。
辺りはまた完全に闇の中へ吸い込まれました。
もう誰もいない山中をさまよう自分。わけが分からなくなったり、理解力が不足してきたりします。
そして遂に1本だけ残ったストックを出してみました。
『おお、少しは楽だ』
自分の早合点でまだ使えるポールを破棄してしまった後悔だけが思い出されます。
突然山道から舗装林道に出ました。
なぜか車がたくさん停まっていました。近づいてみると夜景スポットでした。
宝石をちりばめたような盆地の夜景は素晴らしかったです。家族連れやカップルが楽しそうにしている中、場違いな格好の僕がいました。
写真を数枚撮って、その場を離れます。
再び暗闇へと導かれます。
時々街の灯りが見えますが、またこんなに高く登らせるのか…って思います。
山の裏側へ下ろし、脇を通ってまた表側に出させる… そんなルート取りをさせる憎い演出です。
すごいです。狂いそうです。
スタートしてから24時間がたったころ、軽い幻覚現象が出てきました。
女房が心配してくれて『今夜泊まるところあるの?』と聞いてきます。
はっきり言って今はそんな事を考える余裕はないです。
『大丈夫、放っておいて』と返事します。いざとなったら地べたでも寝られるから…。
もう歩き続けることで精一杯になりました。
ここで初めて残りのルートを確認しました。
まだこんなにあるのか…。
ちょっと身体を横にしないとダメだな…。肩から背中、腰にかけてバキバキになってしまいました。骨と骨の間が詰まってしまい、きしんでいるようです。
どこだかわからないお寺の入口で遂にザックをおろし、身体を放り投げて仰向けに寝転んでしまいました。
続く。