明日の行動を決められないまま土合駅で夜を明かしました。
時刻は午前4時を少し回ったところ。
車外に出てみると、まだ夜は明けきっていません。
ところが雲がタイル状にヒビ割れ、その隙間から青空が見えるのです。
辺りは水と森の匂いがしました。
これから一時的に天気は回復します。
それも予報よりはるかに良い。そんな気がしました。
もうやめて帰る度99.5%まで行った気持ちは、現在10%未満にまで落ち着いています。
朝起きた時点で大雨だったら、きっと帰路についていたでしょうね。
いい一日になる予感がしました。
遅くなるとまた雨になる予報なので、手早く用意します。
今日は予定していたコースとは違うので、ちょっと足りないものがあります。人けのない山に入る時は、熊鈴と熊スプレーを持っていますが今日はそれがない。
熊鈴が無ければ「人間熊鈴」でいいや。つまり自分の声で熊鈴代わりにするだけです。
朝食は歩きながらのおにぎり1個。
あまり食べると調子が上がらないのは長年の経験と自分の特徴です。
山に入る時は食事のことも気にかけていますが、今日はいつものハイキング程度のパンとおにぎりだけです。
一応水はちょっと多めに持ちました。
午前4時15分、土合駅をスタートしました。
あたりはヘッドライトなしでも行けるぐらいの薄明るい感じになりました。
5時25分、一ノ倉沢支柱(A106)チェックポイント。
SCT(スノーカントリートレイル)の道標をちょっと探しました。だって一ノ倉沢の支柱と言ったらコレでしょ?という所に道標のラベルが無いのです。
ぐるぐる探すこと10分、あったありました。
一ノ倉沢の解説板のところですね。
諦めてスタートし始めた時に見つけました。
色も茶色なので目立ちませんね、おそらく景観を損ねない色になっているんでしょうね。
見つけられて良かったー。
一ノ倉沢が正面に見えるところで、お二人のカメラマンが三脚を立てて立派なカメラをセットしていました。
今日のこの日をよく当てますね。
いい写真を撮るのは粘りと根性が必要なのかな。
朝日が雪渓の残る沢筋に反射して燃えるように輝いて見えます。そして、流れる雲。
空には雲があったほうが写真として映えると聞いたことがあります。
ニッコリ挨拶して先に進みます。
昨夜の気分は何処へやら(笑)。
一ノ倉沢と言ったら、多くの命を飲み込んで来たクライミングゾーンです。
あまりにも美し過ぎるその岩壁に、魂を預けるクライマーたちの叫びが風となって僕をすり抜けていくようです。
壁面には遭難された方たちを慰霊する記念プレートが数多く埋め込まれています。
それぞれにジンとくる文言が刻まれています。
「ブナのしずく」と書かれた水場がありました。
冷たくておいしい水でしたが、少しクセがあるように感じました。
足元がだんだんガレてきました。
山らしくなってきて、先程までのスピードは出せなくなりました。
道標に「蓬峠(よもぎとうげ)」の文字が出てきました。
幽ノ沢を渡渉し、しばらく行くとJR東日本の巡視小屋があります。
時刻は6時15分。
その先にまた沢が流れていました。黄色いペンキマークがありましたが、果たしてこれを渡るべきなのかそうでないのか分からなくなりました。
地図では渡らないで沢沿いに歩くのです。
こういう時は一旦戻ってやり直すしかない。そう思いました。
すると小屋が2つありました。後で知ったのは巡視小屋と寮なのだということです。
寮と思しきところに人がいました。
『すみません、お尋ねします。蓬峠へは沢を渡るのでしょうか』
『そう。黄色のペンキのところを渡ると対岸に蓬峠と書いてあるから』
『そうですか、ありがとうございます。こちらを管理されているのですか?』
『いや、布団干しに来たんだ』
20分ほどロスしてしまいましたが、この方がいなければさらに時間をロスしたと思います。本当にありがとうございました。
本当はこのコースを最初に歩きたかったのですが、沢がある山岳ステージなので天気が悪い日は避けたいと思い、魚沼方面のロードを選択したのです。
一泊するなら昨日のコースと繋げればわけないルート取りだったのですが、あの雨では仕方がないです。
むしろ今日歩けただけでもよしとするべきです。
さて、水量の多くなった沢(それでも雨の後とはいえ許容範囲でした)をなんとか半分登山靴を水に浸しながら渡りました。
すると「一ノ倉沢⇔蓬峠」の文字が大きく書かれていました。
かなりの安堵感がありました。
帰ってから地図をよく見ると、僕が沢沿いに行こうとしたのは「柴倉沢」で、実際に歩くのは湯檜曽川沿いだと分かりました。
コンタクトをしていたので、近くが見えにくかったのもあります(つまり老眼ね)。
まだまだツメが甘いですね。反省します。
谷川岳の東斜面は沢だらけなのです。
以前、西黒尾根を登った時に見えたのはこのいくつもの尾根と沢でした。
谷川岳の裏側を歩くことになるとは思っていませんでした。これもスノーカントリートレイルのおかげです。
関東ふれあいの道も美ヶ原高原ロングトレイルも京都一周トレイルも大阪のダイヤモンドトレイルもそうでしたが、僕に新しい発見と冒険心を与えてくれました。
やがてルートは沢から離れていき、急斜面をつづら折りに登り始めました。
なんど折り返しても森は終わりません。
GPSを覗くと、なんとなくあと10回ぐらい折り返せば上に出られるような気がしました。
数え始めます。
1.2.3⋯8.9.10 ありゃりゃまだ着かないぞ。
上には白樺避難小屋があるので、ひとまずそこに照準をあわせます。
11.12.13⋯18.19.20 なんだよぜんぜん終わらないよこのつづら折りは。
23.24.25⋯
あーやっと見えました。
少しなだらかになるところに避難小屋は建っていました。豪雪地帯らしく頑丈な造りでした。
実はだいぶつづら折りを上まで詰めたところだったでしょうか⋯
激しく薮を駆け下りる音とともに黒い物体が。
その2へ続きます。
時刻は午前4時を少し回ったところ。
車外に出てみると、まだ夜は明けきっていません。
ところが雲がタイル状にヒビ割れ、その隙間から青空が見えるのです。
辺りは水と森の匂いがしました。
これから一時的に天気は回復します。
それも予報よりはるかに良い。そんな気がしました。
もうやめて帰る度99.5%まで行った気持ちは、現在10%未満にまで落ち着いています。
朝起きた時点で大雨だったら、きっと帰路についていたでしょうね。
いい一日になる予感がしました。
遅くなるとまた雨になる予報なので、手早く用意します。
今日は予定していたコースとは違うので、ちょっと足りないものがあります。人けのない山に入る時は、熊鈴と熊スプレーを持っていますが今日はそれがない。
熊鈴が無ければ「人間熊鈴」でいいや。つまり自分の声で熊鈴代わりにするだけです。
朝食は歩きながらのおにぎり1個。
あまり食べると調子が上がらないのは長年の経験と自分の特徴です。
山に入る時は食事のことも気にかけていますが、今日はいつものハイキング程度のパンとおにぎりだけです。
一応水はちょっと多めに持ちました。
午前4時15分、土合駅をスタートしました。
あたりはヘッドライトなしでも行けるぐらいの薄明るい感じになりました。
5時25分、一ノ倉沢支柱(A106)チェックポイント。
SCT(スノーカントリートレイル)の道標をちょっと探しました。だって一ノ倉沢の支柱と言ったらコレでしょ?という所に道標のラベルが無いのです。
ぐるぐる探すこと10分、あったありました。
一ノ倉沢の解説板のところですね。
諦めてスタートし始めた時に見つけました。
色も茶色なので目立ちませんね、おそらく景観を損ねない色になっているんでしょうね。
見つけられて良かったー。
一ノ倉沢が正面に見えるところで、お二人のカメラマンが三脚を立てて立派なカメラをセットしていました。
今日のこの日をよく当てますね。
いい写真を撮るのは粘りと根性が必要なのかな。
朝日が雪渓の残る沢筋に反射して燃えるように輝いて見えます。そして、流れる雲。
空には雲があったほうが写真として映えると聞いたことがあります。
ニッコリ挨拶して先に進みます。
昨夜の気分は何処へやら(笑)。
一ノ倉沢と言ったら、多くの命を飲み込んで来たクライミングゾーンです。
あまりにも美し過ぎるその岩壁に、魂を預けるクライマーたちの叫びが風となって僕をすり抜けていくようです。
壁面には遭難された方たちを慰霊する記念プレートが数多く埋め込まれています。
それぞれにジンとくる文言が刻まれています。
「ブナのしずく」と書かれた水場がありました。
冷たくておいしい水でしたが、少しクセがあるように感じました。
足元がだんだんガレてきました。
山らしくなってきて、先程までのスピードは出せなくなりました。
道標に「蓬峠(よもぎとうげ)」の文字が出てきました。
幽ノ沢を渡渉し、しばらく行くとJR東日本の巡視小屋があります。
時刻は6時15分。
その先にまた沢が流れていました。黄色いペンキマークがありましたが、果たしてこれを渡るべきなのかそうでないのか分からなくなりました。
地図では渡らないで沢沿いに歩くのです。
こういう時は一旦戻ってやり直すしかない。そう思いました。
すると小屋が2つありました。後で知ったのは巡視小屋と寮なのだということです。
寮と思しきところに人がいました。
『すみません、お尋ねします。蓬峠へは沢を渡るのでしょうか』
『そう。黄色のペンキのところを渡ると対岸に蓬峠と書いてあるから』
『そうですか、ありがとうございます。こちらを管理されているのですか?』
『いや、布団干しに来たんだ』
20分ほどロスしてしまいましたが、この方がいなければさらに時間をロスしたと思います。本当にありがとうございました。
本当はこのコースを最初に歩きたかったのですが、沢がある山岳ステージなので天気が悪い日は避けたいと思い、魚沼方面のロードを選択したのです。
一泊するなら昨日のコースと繋げればわけないルート取りだったのですが、あの雨では仕方がないです。
むしろ今日歩けただけでもよしとするべきです。
さて、水量の多くなった沢(それでも雨の後とはいえ許容範囲でした)をなんとか半分登山靴を水に浸しながら渡りました。
すると「一ノ倉沢⇔蓬峠」の文字が大きく書かれていました。
かなりの安堵感がありました。
帰ってから地図をよく見ると、僕が沢沿いに行こうとしたのは「柴倉沢」で、実際に歩くのは湯檜曽川沿いだと分かりました。
コンタクトをしていたので、近くが見えにくかったのもあります(つまり老眼ね)。
まだまだツメが甘いですね。反省します。
谷川岳の東斜面は沢だらけなのです。
以前、西黒尾根を登った時に見えたのはこのいくつもの尾根と沢でした。
谷川岳の裏側を歩くことになるとは思っていませんでした。これもスノーカントリートレイルのおかげです。
関東ふれあいの道も美ヶ原高原ロングトレイルも京都一周トレイルも大阪のダイヤモンドトレイルもそうでしたが、僕に新しい発見と冒険心を与えてくれました。
やがてルートは沢から離れていき、急斜面をつづら折りに登り始めました。
なんど折り返しても森は終わりません。
GPSを覗くと、なんとなくあと10回ぐらい折り返せば上に出られるような気がしました。
数え始めます。
1.2.3⋯8.9.10 ありゃりゃまだ着かないぞ。
上には白樺避難小屋があるので、ひとまずそこに照準をあわせます。
11.12.13⋯18.19.20 なんだよぜんぜん終わらないよこのつづら折りは。
23.24.25⋯
あーやっと見えました。
少しなだらかになるところに避難小屋は建っていました。豪雪地帯らしく頑丈な造りでした。
実はだいぶつづら折りを上まで詰めたところだったでしょうか⋯
激しく薮を駆け下りる音とともに黒い物体が。
その2へ続きます。