原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

“お嬢さん”では生きられない

2008年12月19日 | 教育・学校
 昨日、我が子の歯科受診に付き添ったのだが、この歯科医院を訪ねるといつも歯科医先生と子どもの教育談議になる。
 と言うのが、お互いに一人娘がいてその娘の年齢が近く、学校は異なるが私立女子校に通わせているというように共通項が多いためと思われる。

 それにしてもこの歯科医先生、父親であるにもかかわらずご自身の子どもさんの教育に関心の高い方で、いつも教育談議の内容が詳細に渡るのだ。

 
 ひと昔前ならば、開業歯科医師の娘さんと言えば“お嬢さん”のイメージが強かったものである。いわゆる“お嬢さん学校”で一通りの教養や知性を身につけ、“花嫁修業”をして歯科医師のお婿さんでも迎えて父親の歯科医院経営を引き継ぐというのが、よくある歯科医師の娘さんの姿だったのではなかろうか。
 あるいは娘さん本人が歯科医師になって医院を引き継ぐという手もあろう。

 だが、この歯科医先生の場合、娘さんには歯科医師の適性はなさそうだと既に判断されている。そして、血縁での歯科医院の継続もまったく視野に入れていないと断言されるのだ。
 しかも今時、娘を一生“お嬢さん”で生き抜かせるのは困難な時代であることも認識されているようで、娘さんの今後の進路及びそれを後押しする教育について父親の立場で熟慮していこうと考えていらっしゃる様子である。


 確かに、今の時代“お嬢さん”などという言葉は既に死語化していると言えそうだ。これだけの世界の金融危機の中、資産家の親の事業とて一寸先は闇の時代に突入している。親の経済力を当てにするのは危険性が高い。 加えて、晩婚化に非婚化、そして離婚率の急上昇…。男女にかかわらず結婚に将来の経済的安定を見い出す時代ではもはやなくなっている。 
 そうすると、資産家の家庭に生まれた“お嬢さん”であれ、将来は自力で我が身を立てていく準備を子どもの頃から要請されることになろう。そして、それが本人にとっての一生の生きがいともなろう。


 昨日は、我が娘が来年の4月に高校進学するにあたり、既にある程度の将来の進路を絞り込んでいる話をしたのだが、それに関してこの歯科医先生が高い関心を示されるのだ。
 どういう経緯で進路を絞り込んだのか、子ども本人が進路を絞り込むに当たり親として今までに如何なるフォローや環境作りをしてきたのか、等々の質問が尽きない。 我が家の場合、幸いにも子どもが好きで打ち込めることがあることや、それは小さい頃からの経験に基づいていること、等々の談話が続いた。


 この歯科医先生の娘さんご本人にはお会いしたことはないのだが、こういうお父様を持たれていることは幸せなのではないかと私はいつも感じる。
 父親にしてやや教育に熱心過ぎるきらいも感じなくはないのだが、患者の親を捉まえ情報収集をして、我が子の教育や進路の決定に役立てようとするその意気込み、そして元よりご自分の娘さんが今後“お嬢さん”では済まされないことを認識されていることを私は大いに評価申し上げたく思う。

 まさに今の時代、女が“お嬢さん”では生きられない。 
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