原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

リクルートスーツの「過ち」と「憂鬱」

2014年09月18日 | 時事論評
 学校嫌い・集団嫌いで“誉れ高い”原左都子が、「リクルートスーツ」なるものの存在を好意的に捉えている訳もない。


 私自身が就職して社会に旅立った40年近く前の時代には、「リクルートスーツ」なる用語は元より、それらしき“皆お揃い”のスーツを着用せねばならない(義務とも表現可能な)慣習すらなかったように記憶している。

 私の場合新卒での就職先が「医学国家試験取得専門職分野」と特殊だった事も大きな理由であろうが、そもそも私は「就職活動」なるもの自体を一切経験していない。  3月卒業前の秋口に自分自身で就職先候補を選択(私の場合は一大学附属病院と一民間企業を候補として選択)し、当該事業主体が実施する新卒対象入社試験日に試験会場へ直接出向いたものだ。
 その際に何を着て行ったかの記憶すらないのだが、少なくともそのためにスーツを仕立てたり購入した記憶は全くない。 おそらく普段着ている洋服の中で“無難そうな”色合いの洋服を選んで試験に臨んだものと振り返る。 (あくまで参考だが、私が結果として就職先に決定したのは、後者の民間医学関係企業である。)

 その後大幅に時代が経過して、今からほぼ10年程前の我が50歳前程の頃であろうか。
 私は再び「医学関連職歴」を活かそうと志し、某民間医学方面人材派遣会社に履歴書と職務経歴書を送った。 書類審査の結果、派遣社員選抜試験に臨んで欲しいとの電話が担当者氏よりかかって来た。
 その際担当者氏が50歳近い私に向かって伝達事項の最後に発したのが、「当日はリクルートスーツでお越し下さい。」なる一言である。
 (私の感覚から言わせてもらうと、若造担当者氏の“非常識ぶり”に仰天させられると同時に)すぐさま反論した。
 「私はリクルートスーツなる物を所持していませんし、今回私が貴社に派遣先として要望している職種とは、決してスーツを着て執り行う業務ではなく程遠い分野と認識しています。  それにもかかわらず何故、私にリクルートスーツを着用しての採用試験を要求するのかに関する具体的説明をお願いします。」
 そうしたところ返って来た回答とは、「失礼申し上げました。 リクルートスーツでなくても構いませんが、当日は若い世代の方々が大勢試験会場に来場しておりますので、それに準拠する格好での来場をお待ち申し上げております。」   参考のためその後の成り行きを話すと、各種筆記による試験後、電話をかけてきた若造担当者が私の面談を担当してくれ、若者達とは別枠で私の話を時間をかけて十分に聞いてくれたのが印象的である。  それもそのはず、私の過去に於ける医学経験が半端でないのに加えて、私は直前まで独立行政法人「理化学研究所」でアルバイトをしていたのだ。 (民間派遣会社とは、この種の経歴に滅法弱いのが弱点だよね……)


 ここで話題を、大学3年生後期を迎えようとしている我が娘に移行しよう。

 娘曰く、「そろそろ自分の大学でも後期授業が始まった後に、大学のサービスで“リクルートスーツ”着用の上での就職用写真を撮影してくれるようだよ。」
 う~~~ん。
 集団迎合を忌み嫌う母の下に育っている我が娘にも、いよいよ「リクルートスーツ」なる(学校の制服に準ずる集団服)を強制される時が忌まわしいまでも到来してしまったか…

 そうだとして、今の時代に迎合してでも我が娘の就職を成就してやらねばならない親の責任の程も実感させられる。 
 で、その親の責任とは何なのか? 世間に迎合して我が娘に「通り一遍のリクルートスーツ」を着せる事が親の責任であるはずがないのだ!!

 そこで原左都子は考えた。
 少なくとも、我が娘には“娘に似合うリクルート風スーツ”を是非共着せて就職活動に臨ませたいと!
 そうした場合、「リクルート風スーツ」とて多種多様であろう事から私も学習せねばなるまい。 そうと意気込んだ私は、早速娘の体型と雰囲気に合う「リクルート風スーツ」を各メディアより情報収集する事から始めた。 
 そうしたところ、ウエストが57㎝と特異的に細く全体にスリム体型である我が娘に似合いそうな「リクルート風スーツ」が世に存在する事も心得た!

 これこそ、あくまでも新卒学生に「リクルートスーツで就職活動や就職試験に臨め!」と指示・命令する雇用側事業所に対する原左都子のせめてもの反撃である。

 あなた方は、新卒者である若い世代から「何故リクルートスーツで就職試験に臨まねばならないか?!」との質問に、適切な答えが返せるのか!?  
 その自信が一切無くて、まさか「これが日本企業の採用常識だ」とか「我々も皆その常識に従って行動してきている」等々、答えにならない答を新卒者に返しつつ、それに従順に従う主体性無き若者のみを採用している現実と言えないだろうか?!?
 いつ経営破綻するかもしれない企業内で採用者側こそがいつまで自分の身がこの企業で持ちこたえられるのかと怯えているからこその、現在の新卒者採用実態ではないのか!??


 そんな軟弱企業存続を容認して来た国政にこそ、一番の責任の所在があるとしても……

 政治経済困窮時代に際して、新入社員の就職活動及び就職試験に於いて20歳を超える大人に対し、小中高校の制服のごとく「リクルートスーツ」着用を義務として就職を希望する皆に新調させている事態こそを、軟弱体質企業・事業所は率先して廃止してはどうなのか!??

 20歳を過ぎた(既に成人に達している)若者相手に「リクルートスーツ」着用義務を煽り続け、国政さえもが旧態依然として(と言うよりも旧時代に逆戻りしようと企んでいるようだが)日本国民の個性を潰し続けて、この国の将来発展・存続が可能とは到底思えない私だ……