原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

一新卒新入社員が見た今時の職場の風景

2016年04月20日 | 仕事・就職
 我が娘が大学新卒新入社員として4月1日に某民間企業へ就職後、20日が過ぎ去った。

 その間、娘幼少時よりサリバン先生の立場で君臨して来た私が、娘の日々の観察を休んだ事など一時とてない。
 ただ、サリバンとして不覚にも4月4日に歯科にて大臼歯抜歯後38℃超の高熱を出し2日間寝込むとの失態も経験した。 その時にも携帯電話を布団の中に持ち込み、そろそろ娘の帰宅時間かと想像しつつCメールを欠かさず入れ連絡を取り合う作業は欠かさなかった。


 (ここではプライバシー保護のため詳細の記述は避けるが)、我が娘は某分野の技術職員(エンジニア)として民間企業に採用されるに至っている。
 大学にて学んだ専門分野とは大きく“畑違い”のその分野を目指したのには、娘なりの理由があった。
 
 サリバンの目線でも娘は大学にて4年間真面目に学業に励み、「フードスペシャリスト」「フードコーディネーター」「食生活指導士」等々食関連の資格を取得した。
 だが、昨年3月より就活を始めた娘にとって、その分野で内定を取ることは困難と判断したようだ。(サリバンから同様のアドバイスもしたが…。) 
 その分野に於いての就職先とはもちろん食関連企業である事には間違いないが、大卒新卒社員にとりあえず課せられるのは、販売や営業、極端な場合居酒屋での客対応等々顧客対応業務だ。
 これぞ、我が娘が大の苦手とする分野である事を一番にサリバンが指摘した。 同時進行で、娘が就活を頑張る事と裏腹に、あっちで落とされこっちで落とされ続け…
 初夏が訪れる頃、方向転換をするべくサリバンから指導したところ、娘も同様の思いを抱いていたらしく本人自らが就活分野を大幅に変更した。

 その後、娘が一つのターゲットとしたのが、某技術分野企業への就職だ。
 それでも娘が持つ(プラスに表現するなら)“寡黙さ”が災いして、筆記試験は合格するのに面接にて落とされ続ける始末…
 もうダメか…  と一家で諦めかけていた時に娘自らが巡り合い「内定」をゲットしたのが、今春就職した某企業である。
 よくぞまあ、あれ程に寡黙な娘を採用してくれたものだ。(いえいえ、家庭内特にサリバンとの関係に於いてはごく普通に喋くり笑い転げる娘だ。)何せ22年間の二人三脚の歴史が功を奏しているのだが…。

 昨年10月上旬に冒頭の入社企業から「内定」をゲットした娘は、自力で内定を取った事実に何はともあれ感激ひとしおだった様子だ。
 その後、就職先企業指導による「就職前課題」に4月入社までの半年に渡り挑み続け、入社前時点で娘が目指す専門技術分野の「通産省管轄某国家資格」にも合格が叶ったのだ!
 この娘の頑張り力にも感激させられたサリバンの私は、(この子、必ずや当該企業で渡って行ける!)と確信した。


 そして娘は4月1日に入社後、第二週目の4月4日から、(親の視点から考慮しても)実に厳しく専門性が高い「実務研修」を課せられた。
 38℃超の高熱を出して寝ている我が布団の中で、連夜いくら待っても娘からCメール返答が来ない。 一体どうしたのか? 新卒入社したばかりの子供に企業は一体全体如何なる試練を与えているのか?? この事自体が我が病状を更に悪化させる…。

 ただ、2週間の研修後判明した事実とは、採用企業は敢えて新入社員である娘に対して“高いハードル”を通過させたものと理解する。  この試練に耐え切れるならこの新卒新人は使い物になる、との企業側からの課題だったと今は把握している。
 と言うのも入社後3週間を経過した現在、娘は入社前より配属先として指定されていた某出向先に勤務している。 娘の出向先とは、国家の息がかかる某組合組織なのだが…

 娘曰く、「その出向先組織にての業務が生ぬるい…。 私は入社直後に受けた厳しい研修こそによほど達成感を抱けた。 帰りが夜の11時半になってもいいから、私は今後もあの研修時の仕事を担当したい!」
 (さすが、サリバンが指導した娘だ。 それ程までに力強く育ってくれていた事実にサリバン母としては嬉しい限りだ。 ただ、貴方の帰宅時間が夜な夜な午後11時半になるのは、還暦過ぎた高齢母にとっては自分の身を削がれる思いだ。 もうしばらく現在の出向先の様子を見ようよ。)


 昨夜も帰宅した娘に、娘が現在出向勤務している“国家の息がかかる某組合法人”での任務の様子を尋ねた。
 これが実に面白おかしくて、笑い転げた私だ。

 娘曰く、出向先の某組織は超高層自社ビル内の某フロアにあるのだが、そのフロアオフィスには2~300名の職員が勤務しているらしい。
 その“一島”(と表現するべきだろうか)に8名程ずつの職員がまとまっている構造との事だ。 当然ながら、その“島”のリーダーは某組合法人の若手職員である事は想像可能だ。

 「で、新入り社員の貴方は、例えばゴミ処理とかコピー取りとか、お茶入れなどの業務を要求されるよね??」と聞くサリバン母に対し娘応えて、「そんな業務は今時一切ないよ。」

 確かになあ… 
 と時代の変遷を思いつつ更に娘に確認すると、その“島”内の職員達が一日中必要以上の会話をほぼしないとの事だ。
 娘の話によれば、昼飯時も“島”内の職員がバラバラの行動を採っているとの話…。

 そんな現在の時代の趨勢が十分に分かる気もするし、私が若き頃より職場がそうであったならば、単独行動を愛好していた私にとっては楽が出来た気もする。
 そんな意味で、この現象を私は「進化」と捉えたい思いも抱く。
 昔の職場に於いては、とにかく女性陣は“お喋り好き”が大多数だった。 それがプラスに働く職場もあろうが、そもそも仕事中の私語を慎むべきと考えていた私など、部下に対する指導に難儀したものだ。

 NHKが発信した「無縁社会」の実態が職場にも蔓延っている現実を、新卒入社早々の娘より聞く話で再確認した思いでもある。

 (おっと、新入社員の立場の娘が話してくれた“面白おかしい話”とは職員の皆様のプライバシーにかかわる話題であるため、ここでは割愛させて頂こう。 それにしても他人の観察力の鋭さがサリバン譲りである事に驚かされる。 ただこの話を聞いて、娘が当該職場に馴染んで行けそうな感覚を抱けた。)

 何はともあれ、我が娘には「専門力を確かに身に付ける」事を第一義として、今後も自分がゲットした職場組織で達成感を抱けるべく精進して欲しいものだ。