本日のエッセイテーマは、本エッセイ集にておなじみの朝日新聞「書評」ページより引用する。
早速、朝日新聞2022.06.25付「書評」より、ミチオ・カク著「神の方程式『万物の理論』を求めて」に対する千葉大学教授・粒子天文学教授 石原安野氏による書評を、以下に要約引用しよう。
「神の方程式」といわれる、物理学者なら誰しも夢見る理論、というものがある。
その理論は美しい方程式で表されてほしい。寄せ集めのような式ではなく、シンプルなものであってほしい。 それでいて、宇宙の始まりから終わりまで、巨大ブラックホールからこれ以上分割できないところまで細かくしていくと現れる素粒子まで、を教えてくれると言う方程式だ。
これまでに多くの現象を説明し大成功を収めている現代物理学の標準とされる理論を著者は(ほとんど)万物の理論と呼ぶ。 著者いわく「問題は、その理論が不格好だということだ」。
もちろん問題はそれだけではない。 不格好と呼ばれてしまうこの理論に足りていないのは重力に対す第一原理からの説明だ。 このところ重力波の観測やブラックホールの撮影などに日常的にはとても現れないような強い重力の観測に急速な進展があり、新しい理論への示唆が期待されている。
本書は古代ギリシャ時代から現代物理学の標準となっている理論に至るまでの理論の大転換を俯瞰し、夢の方程式がどうしたら現実のものとなるかを考える。
著者の専門は超ひも理論だ。 長い間美しい理論の有力候補として存在している。 本書の語り口はまさに啓蒙書に定評がある著者らりい軽々としたもので、物理学になじみのある方よりももしろ普段は物理学と縁遠い生活をしている人がSFを楽しむかのように読み、宇宙や素粒子の世界に思いをはせるのにふさわしい。
万物の理論は人類が抱える問いの一つに答えをもたらす可能性を秘めている。 それは「なぜ宇宙はあるのか」という問いだ。 これは科学分野にとどまらない大きな問いなのである。
(以上、朝日新聞「書評」ページより要約引用したもの。)
つい最近、メディアにて「ブラックホール」の撮影に成功したとのニュース報道を見聞した。
以下に、ネットよりその報道の一部を引用しよう。
巨大ブラックホールの輪郭撮影に成功 天の川銀河で初
2022年5月13日
私たちの太陽系がある天の川銀河の中心に存在する巨大ブラックホールの輪郭の撮影に成功したと、日本も参加する国際研究グループが発表した。
天の川銀河の巨大ブラックホールの姿をとらえたのは初めてで、銀河の成り立ちを理解する重要な手がかりになる成果として注目されている。
この天体は、「いて座」の方角に2万7000光年離れているということで、画像には、強い重力に引き寄せられて高温になったガスによって明るい輪のようなものが見え、その中央には、光が脱出できないために黒い穴のようになった「ブラックホールの影」が写しだされている。
(以上、ブラックホールに関する最新のネット一部を引用したもの。)
原左都子の私見だが。
冒頭の書評内にも記されているが、このところ日常的にはとても現れないような強い重力の観測に急速な進展があり、新しい理論への示唆が期待されている事実に触れる機会が多い。
はたまた、我が国のJAXAが開発した“はやぶさ2”が持ち帰った小惑星リュウグウの砂からアミノ酸が検出され、その解析が現在進行中でもある。
「リュウグウの砂」をめぐる世界の研究チームによるその“解析ドラマ”を、楽しみに見物させていただきたいものだ。
理論が不格好であれ美しくあれ。
とにもかくにも現代の物理学の行く先はまさに「宇宙」にあり、いとも小さき一つの星に過ぎない「地球」上にてささやかに生命を営む我々に。
物理学とは、大いなるロマンと夢を与え、未来を描かせてくれるがごとくだ。