◎文部省印行『修身教訓』明治13年版の「例言」
いま机上に、文部省印行の『修身教訓』がある。扉には、「明治十年一月/修身教訓/文部省印行」とある。ただし、奥付によれば、この本が出版されたのは、明治一三年(一八八〇)七月。翻刻出版人は小笠原美治、発兌は、山中市兵衛、印刷は弘令社である。
本文二八五ページの活字本で、本文の冒頭に「宮崎駿児 訳」、本文の末尾に「飯島半十郎 校」とある。この版を、仮に、明治十三年版『修身教訓』と名づけておく。
本日は、その「例言」を紹介してみよう。
修身教訓
例言
此ノ原書ハ米利堅人コウドレイ氏ノ編選ニシテモラルレツスンスト名ツク西暦千八百五十六年ノ刊行ナリ一課毎ニ古聖賢ノ格言ヲ掲ケ次ニ実際行ヒタル勧懲ノ数話ヲ録シ幼童ヲシテ修身ノ道ヲ知ラシメンヲ要スルナリ
書中ノ訳字土地人名ノ如キハ普通ニ行ハルヽ華盛頓倫敦等ノ外敢テ漢字ヲ填セズ
書中右傍ニ単線ヲ施スモノハ人名書名等ナリ双線ヲ施スモノハ地名国名等ナリ上下ニ矩域ヲ施スモノハ尺度度量衡貨幣等ノ原語ナリ
明治九年十二月
これを、現代風の表現に直せば、次のようになろう。
修身教訓
例言
この原書はメリケン人〔アメリカ人〕コウドレイ氏の編選にして「モラルレツスンズ」と名づく。西暦千八百五十六年の刊行なり。一課ごとに古聖賢の格言を掲げ、次に実際行ひたる勧懲〔勧善懲悪〕の数話を録し、幼童をして修身の道を知らしめんを要するなり。
書中の訳字、土地人名の如きは、普通に行はるる華盛頓〔ワシントン〕・倫敦〔ロンドン〕等の外〈ほか〉、敢て漢字を填せず。
書中、右傍に単線を施すものは人名・書名等なり。双線を施すものは地名・国名等なり。上下に矩域〔カギカッコ〕を施すものは尺度・度量衡・貨幣等の原語なり。
明治九年十二月
ここにいう「原書」、すなわち、コウドレイ氏の「モラルレツスンズ」とは、M. F. Cowdery の著書‘Elementary moral lessons, for schools and families’を指すものと思われる。この原書は、国立国会図書館に蔵本がある。書誌情報は、以下の通り。
図書
H. Cowperthwait & Co., 1867
冊子体 ; viii, 9-261 p. : ill. ; 18 cm
タイトル Elementary moral lessons, for schools and families / by M. F. CowderyタイトルでNDLオンラインを再検索する
出版事項 Philadelphia : H. Cowperthwait & Co.
出版年月日等 1867
大きさ、容量等 viii, 9-261 p. : ill. ; 18 cm
著者標目 Cowdery, Marcellus FWeb NDLAの当該著者標目へのリンク著者標目でNDLオンラインを再検索する
件名 Ethics件名でNDLオンラインを再検索する
分類(LCC) BJ1025
資料形態 冊子体
資料種別 図書
データベース 国立国会図書館蔵書
なお、国立国会図書館には、文部省印行『修身教訓』も架蔵されている。こちらは、扉に「明治十年二月交付」という文字がある。本文三七五ページで、そのあとに、正誤表が二ページ分ある。奥付はなし。こちらの版を、仮に、明治十年版『修身教訓』と名づけておく。【この話、続く】