◎国民古典全書第49巻『秋成・綾足名作集』は未刊
昨日の話の続きである。日本古典全書『上田秋成集』(朝日新聞社、一九五七)の校註・解説を担当した重友毅(一八九九~一九七八)は、「『上田秋成集』の校註を引受けたのはまだ戦時中のことだつた」と述べていた。
ということは、「日本古典全書」の企画は、戦時中に遡るということなのだろうか。これについては、そうだとも言えるし、そうでないとも言える。
「日本古典全書」が企画されたのは戦後だが、戦時中に、「国民古典全書」というものが、同じ朝日新聞社によって企画され、その第一巻は、一九四五年(昭和二〇)一月に、発刊されている。この「国民古典全書」が、「日本古典全書」の基礎となったことは明白である。ただし、その収録内容には、かなりの違いがある。
いずれにしても、重友毅は、すでに「国民古典全書」の段階で、「上田秋成集」の校註を依頼され、引き受けていたのだろう。
「国民古典全書」全五十二巻の内容は、一度、このブログで紹介したことがあるが(2018・10・6)、以下に、再度、掲げてみる。
国民古典全書 第一期刊行/全五十二巻(*を附せる巻より遂次刊行の予定)
首巻(一) *詔勅集
首巻(二) 御製集
上 古 篇
第一巻 *古事記・祝詞・宣命
第二・三巻 *日本書紀 上・下
第四巻 風土記・高橋氏文・古語拾遺
第五巻 古代歌謡集
第六・七巻 *万葉集 上・下
第八巻 古今集・金葉集・新古今集
第九巻 漢詩集
第十巻 仏教集(一)
第十一巻 物語文学集
第十二巻 日記文学集
第十三巻 随筆文学集
第十四・五・
六巻 源氏物語 上・中・下
第十七・八巻 今昔物語 上・下
第十九巻 大鏡・増鏡
中 世 篇
第二十巻 *山家集・金槐集・新葉集・李花集
第二十一巻 中世歌学集
第二十二巻 中世歌謡集
第二十三巻 説話文学集
第二十四巻 平家物語
第二十五巻 神皇正統記・愚管抄・吉野拾遺
第二十六
・七巻 *太平記 上・下
第二十八巻 仏教集(二)
第二十九巻 謡曲集
第三十巻 芸術論集(一)世阿弥・禅竹・演劇論
第三十一巻 芸術論集(二)書道論・画論・茶道論等
近 世 篇
第三十二巻 *神道要集
第三十三巻 *国学集(一)本居宣長集
第三十四巻 *国学集(二)平田篤胤集
第三十五巻 朱子学集
第三十六巻 陽明学集
第三十七巻 心学集
第三十八巻 *武士道集
第三十九巻 *水戸学集
第四十巻 経済論集
第四十一巻 近世和歌集(一)
第四十二巻 近世和歌集(二)
第四十三巻 近世歌論集
第四十四巻 俳諧集(一)芭蕉集
第四十五巻 俳諧集(二)蕪村中心
第四十六巻 西鶴名作集
第四十七巻 近松名作集
第四十八巻 浄瑠璃名作集
第四十九巻 秋成・綾足名作集
第五十巻 *幕末志士集
以上は、日本文学報国会編纂『古事記・祝詞・宣命』(国民古典全書第一巻、朝日新聞社、一九四五年一月)の附録「国民古典全書通信 第一号」にあった内容紹介から、タイトルだけを紹介したものである。
この第四十九巻に、『秋成・綾足名作集』が入っている。その解説ないし校註担当者は次のように予定されていた。
佐藤 春夫
第四十九巻 秋 成・綾 足名作集 武蔵高校教授 重友 毅
早大助教授 暉峻 康隆
佐賀高校教授 杉浦正一郎
収録予定作品、校註の分担などは不明である。なお、「綾足」というのは、江戸中期の文人・建部綾足(たてべ・あやたり)のことである。【この話、続く】