礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

国民古典全書第49巻『秋成・綾足名作集』は未刊

2021-04-20 06:04:41 | コラムと名言

◎国民古典全書第49巻『秋成・綾足名作集』は未刊

 昨日の話の続きである。日本古典全書『上田秋成集』(朝日新聞社、一九五七)の校註・解説を担当した重友毅(一八九九~一九七八)は、「『上田秋成集』の校註を引受けたのはまだ戦時中のことだつた」と述べていた。
 ということは、「日本古典全書」の企画は、戦時中に遡るということなのだろうか。これについては、そうだとも言えるし、そうでないとも言える。
「日本古典全書」が企画されたのは戦後だが、戦時中に、「国民古典全書」というものが、同じ朝日新聞社によって企画され、その第一巻は、一九四五年(昭和二〇)一月に、発刊されている。この「国民古典全書」が、「日本古典全書」の基礎となったことは明白である。ただし、その収録内容には、かなりの違いがある。
 いずれにしても、重友毅は、すでに「国民古典全書」の段階で、「上田秋成集」の校註を依頼され、引き受けていたのだろう。
「国民古典全書」全五十二巻の内容は、一度、このブログで紹介したことがあるが(2018・10・6)、以下に、再度、掲げてみる。

 国民古典全書 第一期刊行/全五十二巻(*を附せる巻より遂次刊行の予定)
首巻(一)  *詔勅集 
首巻(二)   御製集
  上 古 篇
第一巻    *古事記・祝詞・宣命
第二・三巻  *日本書紀 上・下
第四巻     風土記・高橋氏文・古語拾遺
第五巻     古代歌謡集
第六・七巻  *万葉集 上・下
第八巻     古今集・金葉集・新古今集
第九巻     漢詩集
第十巻     仏教集(一)
第十一巻    物語文学集
第十二巻    日記文学集
第十三巻    随筆文学集
第十四・五・
六巻      源氏物語 上・中・下
第十七・八巻  今昔物語 上・下
第十九巻    大鏡・増鏡
  中 世 篇
第二十巻   *山家集・金槐集・新葉集・李花集
第二十一巻   中世歌学集 
第二十二巻   中世歌謡集
第二十三巻   説話文学集
第二十四巻   平家物語
第二十五巻   神皇正統記・愚管抄・吉野拾遺
第二十六
・七巻    *太平記 上・下
第二十八巻   仏教集(二)
第二十九巻   謡曲集
第三十巻    芸術論集(一)世阿弥・禅竹・演劇論
第三十一巻   芸術論集(二)書道論・画論・茶道論等
  近 世 篇
第三十二巻  *神道要集 
第三十三巻  *国学集(一)本居宣長集
第三十四巻  *国学集(二)平田篤胤集   
第三十五巻   朱子学集
第三十六巻   陽明学集
第三十七巻   心学集
第三十八巻  *武士道集
第三十九巻  *水戸学集
第四十巻    経済論集
第四十一巻   近世和歌集(一)
第四十二巻   近世和歌集(二)
第四十三巻   近世歌論集
第四十四巻   俳諧集(一)芭蕉集
第四十五巻   俳諧集(二)蕪村中心
第四十六巻   西鶴名作集
第四十七巻   近松名作集
第四十八巻   浄瑠璃名作集
第四十九巻   秋成・綾足名作集
第五十巻   *幕末志士集

 以上は、日本文学報国会編纂『古事記・祝詞・宣命』(国民古典全書第一巻、朝日新聞社、一九四五年一月)の附録「国民古典全書通信 第一号」にあった内容紹介から、タイトルだけを紹介したものである。
 この第四十九巻に、『秋成・綾足名作集』が入っている。その解説ないし校註担当者は次のように予定されていた。

                           佐藤 春夫
第四十九巻   秋 成・綾 足名作集    武蔵高校教授  重友 毅
                    早大助教授  暉峻 康隆
                   佐賀高校教授  杉浦正一郎 

 収録予定作品、校註の分担などは不明である。なお、「綾足」というのは、江戸中期の文人・建部綾足(たてべ・あやたり)のことである。【この話、続く】

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