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随筆紹介「自動車学校はいま」  文科系

2011年03月24日 00時26分45秒 | 文芸作品
 今回もまた、同じ同人の方の随筆を紹介します。毎月発行の小冊子今月号から、今回はS.Hさん。自動車運転免許に関わる「高齢者講習」のことを扱っています。元気な元気な、根っからの女権拡張論者女性。2月24日にここに載せて好評を博した「病院の姥たち」は同じこの作者のもの。そう語ればもう、ここには彼女のファンが居るはずですね。僕も彼女のファンなんです。


『   自動車学校はいま  S。H

 高齢者講習通知書が郵送できた。七十四歳の私は、自動車学校で所定の講習を受けないと自動車免許が再交付されない。昭和四十年〔1965〕に運転免許を取得して以来、一度も車の運転をしたことがないペーパードライバーだ。返納するか、再交付を受けるか、随分迷った。運転免許は主婦の私にとって、写真添付、本籍記載ありの自分が何者かを証明するただ一つのものだ。私が預けたお金なのに、五百万円以上引き出すとすれば、銀行は私が本人だと言う証拠を見せろという。住基カードなら対応してくれるが、私は運転免許に愛着がある。昭和四十年取得の普通車免許には、八トントラックから大型バイクまで運転できる特典が付随している。バイクに乗って稽古事に行く気力も十分ある。高齢者は判断力も視力も衰えているから危ないと、大合唱。転ばぬ先の杖だと、親切の押し売りのような講習通知に反発した私は、今回は再交付を受けようと、自動車学校にやってきた。
 手続きのため事務所に入った。女性職員一人、男性職員一人の異様に静かで寂れた光景が見えた。私が自動車学校に通っていた当時、休暇をやり繰り集中で実技を磨き、免許取得に励んでいたおっちゃん達が多かった。実技指導の上手な講師の奪い合いが常にあった。
 喧嘩腰で相手を言い負かしおっちゃん達は、練習時間を確保していた。学校はお客様同志で調整をつけてくれと、いわんばかりであまりタッチしなかった。
 様変わりしたなぁ。運転免許をとる若い世代の数が減っている。今年の新成人は百二十五万人。ピーク時の半数にも満たないと、テレビ報道があった。
 こんな事で自動車学校の経営は大丈夫なのかな。余計なことを心配した。
 コースに出て実技に入ることになった。運転は出来ないからと、事務所で伝えてあるので見学するだけだと、思っていた。それなのに、指導員のおっちゃん先生は、「運転はしていただきます。わたしが横でブレーキ踏みますから」と、きっぱり言った。
 受講料五千八百円受け取った方は、手抜きするわけにはいかない。世の中甘くはない。やるかと、腹を決めた。それにしてもこのおっちゃん先生、勇気あるなぁ。主婦、運転教習中、塀に激突。指導員大怪我なんてことになったら、先生クビになっちゃうよ。
「何年ぐらい、ブランクあるの」
「四十六年間、一度もハンドル握ってません」と、私。のけ反りこそしなかったが先生は「ちょっと待っててね」と、事務所への階段をかけのぼり、すぐに引き返してきた。「サアー。始めますよ」と、私を車に案内。先生は助手席に乗り込み、車は外周コースに出た。あれ─。今まで私の運転する車の前を走っていた教習車は、忽然と消え失せ、私一人だけの専用コースになっていた。どうにか一周して運転から開放された。
 視力、判断力は良好。実技はペーパードライバーなので外周のみ運転と書かれ、終了証をゲット。講習は政府の方針だが、高齢者からお金を出さす為の方策のようにも思えた。 』
コメント (7)
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