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随筆紹介 「ショック」   文科系

2011年10月28日 08時33分04秒 | Weblog
 同人誌仲間の随筆を紹介します。今回は、良く紹介するY・Sさん。

【   ショック!  Y・S

 肩鍵盤を痛めてからずうっと診てもらっていた整形外科の医師が転勤になった。湿布をくれるだけで「あとは日にち薬だね」と素気無かったが、どこか温かみのある信頼できる人柄だっただけにがっくりときた。次はどんな医師が担当になるだろうかと不安になる。
 その半月後、今、世界中で最も私が頼りにしている人物、リハビリの理学療法士のお兄さんが突然私の前から消えた。違う病棟に移動になったそうだ。こんなことってあり?しばし呆然となった。だってまだ二日前に、私の肩や腕の曲げ伸ばしのデータを見ながら(彼は独自のノートを作って記録をとってくれていた)「少しずつ良くなっていますよ。よし、この調子で来週からは違う運動も取り入れて一緒に頑張りましょう」そう言ってくれたばかりではないか。おそらく彼自身も知らない急な院内移動だったのだと思う。が、裏切られた気分はぬぐえない。担当が変わった今度の療法士は専門学校出たての二十歳の女の子。作業療法士だという。「痛かったら言ってくださいね」と言いながら治療を始めたが、触れ方がソフト過ぎてどうにも頼りない。治療時間も短い。そして必要以上におしゃべりだ。
 しばらくはショックから立ち直れなかった。リハビリの待合室に私を呼びにきてくれるいつもの彼の姿はもうない。治療をしてくれていたときの彼の額の汗を思い出す。私のようなオバさんの質問にもまっすぐに目を見て説明をしてくれた。一生懸命さが伝わる真剣なまなざしがよかった。照れくさそうな笑顔もよかった。私は彼に見捨てられた、捨てられたんだと思うと情けなくなった。リハビリを続ける気力も萎えようというもんだ。
 家族にはリハビリに行くといって映画館に行った。次の日は水族館へ行って一日中イルカや魚を観ていた。その次は美術館へと、リハビリをサボり始めてしまった。これではまったく失恋した女学生なみだ。笑えてくる。
 だがこれは決して恋心ではない(改めて言うまでもないけど)。病を治したい一心で頑張ってきて、それでも一向に良くならない、痛みもとれない、先が見えないことに暗澹としていたときの一筋の光明だったのが理学療法士の彼だったと思う。それが突然予告も無くて吹き消されて再び闇の世界になったのだから、ショックだったのは当然だろう。
 さて気が進まない女の子のリハビリ治療に通いながら、初めての医師の診察日を迎えた。初対面の若い医師は、カルテを見て私の怪我の症状や経過を聞きながら、いきなり「肩に注射をしましょう。痛み止めと胃薬も出しますね。あとは湿布とゲルの塗り薬は何本いるかな?」ときた。驚いた。今までの医師とはまったく逆のタイプだ。薬局で抱えるほどの薬をもらったら軽くめまいがした。これじゃあダブルショックで寝込みそうだよ。】

コメント (8)
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