夕刊フジのサイトでこんな記事を見た。見出しが『ザック「銀座、六本木」出かける日本通…なぜか低い知名度』で、記事の書き出しはこうだった。
『就任以来13試合負けなしのサッカー日本代表・ザッケローニ監督(58)。ところが、その人気や知名度となると、歴代日本代表監督から大きく後れをとっている。いったい、なぜ…?』
この記事を見た人で、中日ドラゴンズの落合監督退任を思い出したのは僕だけではないだろう。こういう性質の問題として。 『スポーツと「(マスコミ)人気」』。スポーツならば、技術、勝敗が最大目標になる。そういうものとして観戦するならば、勝てる監督はよい監督だろう。ザックも落合博満も名監督である。それが人気がない、と言う。こうして、こんなことを思った。現在の日本では「スポーツ人気」と「スポーツ」を別物と見るべきではないかと。そこに僕は、強烈なマスコミの作為、影響を感じてならないのである。
急発展した日本プロサッカー界の短い歴史の中から、一例を挙げて、問題の所在を探ってみる。
日本プロサッカー史で著名な点取り屋と言えばまず三浦知良と中山雅史。この二人の比較に、今問題にしていることが含まれていると思う。年齢は同じ、活躍度、その時期も似ている。が、案外知られていないことがこれだ。点取り屋としては中山の方がかなり実績が高いのである。J1通算得点で、中山が157、三浦が139だ。得点王回数でも2回と1回。ワールドカップ出場回数でも2回の中山に対して、カズは0回である。それでいて、話題に上るのはカズの方が圧倒的だ。そこに僕は読売の長期的マスコミ戦略の成果を感ずる。野球でもそうだが、自前のスポーツタレントを育成してきた読売の長期戦略のその産物が、カズなのではないか。
同じことを、最近の点取り屋についても思う。上の二人などに比べてたいした実績はないのにあちこちで話題に上り続けるFWに、森本貴幸がいる。いつも代表候補にあがる若手で、読売ベルディの出身である。09年、10年と2回連続得点王になった、ザックご推奨第1FWの前田遼一よりもひょっとして有名なのではないか。ちなみに、2回得点王は外人助っ人も含めて、中山と前田しかいない。
さて、スポーツマスコミならば、スポーツ振興、国民皆スポーツという観点を是非保持してほしいと願う。やるものとしてのスポーツの人気が近年急速に下がってきているのではないかと見ているから、スポーツ好きとしてはなんとなく寂しい気分でもあるし。
スポーツマスコミは、スポーツをスポーツ自身としてもっともっと面白くする努力をしてほしいと思っている。その努力が足りないから落合もザックも「人気」がでないのだと、こう言ったら言い過ぎだろうか。