たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『この地球で私が生きる場所』_ロッキー山脈に抱かれて(1)

2019年12月29日 23時32分28秒 | 本あれこれ
「バンフ在住(カナダ) ツアーガイド 片岡美香さん27歳

 カナディアン・ロッキーの中でも、最も有名でかつ最も大きいリゾートタウンが、バンフだ。美しい山々に囲まれ、ボウ川とスプレイ川の合流地点に広がっている。人口4000人のこの町に、夏は1万人もの観光客が訪れる。

 片岡美香さんは、バンフに魅せられて日本から移り住み、ツアーガイドとして活躍している。彼女の仕事は、日本から来る客を空港で迎え、バスでロッキー山脈周辺を案内することだ。バンフの魅力をひとりでも多くの人に感じてほしいと思っている。

 バンフでは大自然のもと、動物と人間とが共存している。住宅の庭に鹿が入り込んで草を食べているのはごく日常的な風景だ。110年の歴史をもつバンフ国立公園でも、動物は手厚い保護を受けている。

「公園で、エルク(大鹿)のオス同士が戦っているのを遠くからみていたことがあったんです。そうしたら林の茂みから急にもう1頭、出て来た。私も一応、メスだからでしょうか(笑)追われたんですよ、すごく怖かった」

 もともと旅行が大好きな片岡さんは、日本の旅行会社に就職した。だがその会社は1年あまりで倒産してしまう。その後はアルバイトをしてお金をためては旅行をしていた。バンフに来たのも最初は観光だった。

「初めて旅行で来たとき、ひらめくものがあったんです。私が探していたのはここだ、と。環境が私に合っているんでしょうね。だからすごくリラックスして生活できる。来たくて来たくてしかたなかったところにやっと来られたという感じ。毎朝、窓を開けて山を見ると、ああ、私は本当にここに住んでいるんだなってつくづく感じます。毎日見ても飽きない景色なんですよね」

 カナダの旅行会社に就職した彼女は、憧れのカナディアン・ロッキーを毎日見られる今の状況を自分の力で手に入れた。」


この地球で私が生きる場所――海外で夢を追う女たち13人
朝日新聞日曜版編集部
平凡社