たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』より_創造力のカンブリア大爆発

2019年12月20日 19時15分39秒 | 本あれこれ
「アンはプリンス・エドワード島に来て、美しい自然に次々と自己流に名前をつけていきます。地元の人々にとっては、ただの並木道でしかなかったものを、「喜びの白い道」と呼び、バリーの池は「輝く湖」といった具合にどんどん新しくめいめいしていく。このようなアンの名づけの行為は、ちょうど言語を獲得した人類がいろいろなものに次々と名前をつけていくプロセスに近いものがあります。

 旧約聖書の「創世記」には、天地創造の様子が記されています。初めに天地を創造した紙が、自分が創り上げたものに次々と名前を与えていく情景です。

 「光あれ」で光を創った神は、光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ。夕べと朝の誕生です。その後、大空を創り、水を創った。地を創り、海を創り、草木や季節や星、鳥や動物を創り、最後に神は自分にかたどって人を創造しました。天地創造の完成です。

 人類にとっての名づけの行為とは、このように非常に重要かつ神聖なものです。原初的な喜びの衝動とでも言うべきものがある。

 人間の創造力は、ときに「カンブリア大爆発」にも似ています。氷河時代、赤道付近も含めて地球全体は完全に氷で覆われていました。そしてその間、生物も密かに堪え忍んで細々と生き延びていた。それが、約五億四千万年前の古生代カンブリア杞に、気温の上昇と共に生物が爆発的に多様化・進化しました。その現象を指すのが「カンブリア大爆発」です。

 アンにとって氷河時代とは、生まれてからグリーン・ゲーブルズに来るまでのこと。その間アンは、氷河時代の生物のように厳しい生活環境に堪え忍んできたのです。それがプリンス・エドワード島という一気に想像力を広げる余地のある土地にきて、想像力のカンブリア大爆発が起きた。

 それはつまり、アンがグリーン・ゲーブルズに来る前の現実世界での厳しい環境がなかったら、花開くことのなかった想像力だったのかもしれません。」
 
 
「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法 (講談社文庫)
茂木 健一郎
講談社