たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

愛知県歯科医師会からの通達、抜歯で患者亡くなる

2022年03月13日 16時29分56秒 | 気になるニュースあれこれ
https://ameblo.jp/1219urawamadamu/entry-12728654405.html


2009年『ルーヴル美術館展』より-「ペテロの涙」

2022年03月13日 00時56分07秒 | 美術館めぐり
グェルチーノ
(1591-1666)
《ペテロの涙》
1647年
油彩、カンヴァス
122×159cm

(公式カタログより)

「17世紀イタリアの偉大な画家のひとりで、ボローニャの町に忘れがたい刻印を残したグェルチーノは画家として、まだ、素描家として並ぶ者のない存在として知られている。本作品がルイージ・タンジッロによる「ペテロの涙」というルネサンスの詩から採られたことは間違いないが、線描性の勝ったこの画家の特質がよく示されている。その素描は簡潔で力強く、的確に画面構成がなされ、強い消失線による遠近法的表現の適用から理解されるように、明確な科学的素養が見られる。これはグェルチーノ成熟期の傑作であり、ボローニャの偉大なライヴァルであるグイド・レーニの古典主義の影響が感じられる。

 線病的ではあるが、同時に、本作品は色彩豊かでもある。画面左側の聖母と右側の聖ペテロはともに悲嘆に暮れ、その疲弊した態度で対応しているばかりか、グェルチーノが望んだ対句変換的な色彩表現(青、オレンジ、白)においても呼応している。息子を失った悲しみから聖母は涙を流しているが、頭部を囲む光輪によっても彼女が聖母であることが示唆されている。視覚的ヒエラルキーは道徳的なそれに対応している。すなわち、聖ペテロはイエスを裏切ったことを悔い、聖母はその息子の死に耐えている。

 イタリアには夥しい数の宗教画があり、グェルチーノは多くの宗教画を制作した。けれども、ルーヴルのこの作品はふたりの聖人の人物を前例のない手法で配したというその主題の特殊性もさることながら、17世紀の画家たちによって強調されたひとつの要素を独自に照らし出している。すなわち、感情表現である。この作品を貫き、作品が完成されて3世紀以上を経てもなお、この作品に生動感を与えているのは感情表現であり、強い情動、悲劇的感覚である。

 グェルチーノの真摯な信仰は疑い得ないが、このような作品が対抗宗教改革という文脈において初めて構想されたことも事実であろう。感覚を揺さぶり、心情の吐露によって魂を結び付け、悲壮性を見るように仕向けるという点において、グェルチーノのこの作品は17世紀の芸術がもたらした重要な寄与、すなわち、情念の美を見事に具体化している。実際、本展覧会はこの作品をもって終えることになるのだが、ここには17世紀の画家たちが原始キリスト教会の人物像を描くのに示した「創意」、すなわち、ある種の古代を復活させた「創意」を見ることができる。」