たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

日本の原子力安全維持体制の形骸化

2022年03月30日 16時15分26秒 | 東日本大震災
東京電力・福島第一原子力発電所事故の特徴
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/b167f2d9cb993c57954ff0cafec64029




『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書 』より、

「福島原発事故独立検証委員会 北澤宏一委員長メッセージ
 不幸な事故の背景を明らかにし、安全な国を目指す教訓に

-日本の原子力安全維持体制の形骸化-

 この検証の中で、日本の原発の安全性維持の仕組みが制度的に形骸化し、張子のトラ状態になっていることが明らかになりました。その象徴は「安全神話」です。安全神話はもととも立地地域住民の納得のために作られていったとされますが、いつの間にか原子力推進側の人々自身が安全神話に縛られる状態となり、「安全性をより高める」といった言葉を使ってはならない雰囲気が醸成されていました。電力会社も原子炉メーカーも「絶対に安全なものにさらに安全性を高めるなどといいうことは論理的にあり得ない」として彼ら自身の中で「安全性向上」といった観点からの改善や新規対策をとることができなくなっていったのです。メーカーから電力会社への書類でも「安全性向上」といった言葉は削除され、「安全のため」という理由では仕様の変更もできなくなっていました。

 原子力安全委員会が「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧股は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする指針を有していたという事実がその好例です。なぜ高い安全性を実現しなければならないはずの原子力安全委員会がこのような内容を盛り込んだ指針を作らなければならないのでしょうか。この指針があることで、電気事業者は過酷事故への備えを怠った面があります。安全を犠牲にして電力事業者の負担をなるべく減らそうとするご機嫌とりにしか見えません。原子力推進側にいたことのある、ある政府高官は「当時は原子力安全委員会において、東電の発言権が大きかったことは確かです。そして一旦このような指針が決められると「間違っていた」として訂正することはほぼ不可能でした」と語っています。

 米国や欧州では1979年のスリーマイルアイランド事故や2001年9月11日の同時多発テロ事件の後、センサー類やベントのためのバルブの改善を含むいくつかの過酷事故対策が実施されました。しかし当時の日本政府や電気事業者はこうした対策の多くを無視し、その結果、過酷事故への備えが不十分となっていました。世界平均の数十倍もの高い確率で巨大地震が発生する国である日本が過酷事故対策についてこのような態度をとってきたこは国際社会に対しても恥ずべきことと言わねばなりません。

 この調査中、政府の原子力安全関係の元高官や東京電力元経営陣は異口同音に「安全対策が不十分であることの問題意識は存在した。しかし、自分一人が流れに棹をさしても変わらなかったであろう」と述べていました。じょじょに作り上げられた「安全神話」の舞台の上で、すべての関係者が「その場の空気を読んで、組織が困るかもしれないことは発言せず、流れに沿って行動する」態度をとるようになったということです。これは日本社会独特の特性であると解説する人もいます。しかし、もしも「空気を読む」ことが日本社会では不可避であるとすれば、そのような社会は原子力のようなリスクの高い大型で複雑な技術を安全に運営する資格はありません。」

                                     ⇒続く

東京電力・福島第一原子力発電所事故の特徴

2022年03月30日 00時46分03秒 | 東日本大震災


 分厚い一冊、10年越しでようやく一通りなんとか読み終わりました。先週気温が低下した時の首都圏の電力逼迫、ロシアのウクライナ侵攻、海外へのエネルギー依存度をさげるために資源のない日本は、停止中の原発を今すぐ再稼働させるべきなのか、むずかしくてわかりません。一人一人が考えるべき時なのでしょう。当時就労していた大会社で、決算期の業務をやっつけながらもパソコンの画面に、放水する様子を流すニュース映像を立ち上げ、気もそぞろに緊張感をもって見守っていたことを思い出します。せめて、あの時なにが起っていたのかをたどっていきたいと思います。

 現在日本で稼働中の原発は、四国電力伊方発電所3号機、九州電力玄海原子力発電所4号機、九州電力川内原子力発電所1号機。

原子力規制委員会HPより、

https://www.nsr.go.jp/jimusho/unten_jokyo.html?msclkid=39c82ff3af7411ec94ac46f507c5e83e

『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書 』より、

「福島原発事故独立検証委員会 北澤宏一委員長メッセージ
 不幸な事故の背景を明らかにし、安全な国を目指す教訓に

-東京電力・福島第一原子力発電所事故の特徴-

 福島第一原子力発電所の事故の最大の特徴は、「過密な配置と危機の増幅」でした。福島第一原発には、6つの原子炉と7つの使用済み燃料プールが接近して配置されていました。現場の運転員たちは、水位や圧力を示すセンサーなどの表示が信頼できないという絶望的な状況の中で、危険な状態に陥った多数の炉や使用済み核燃料プールに同時に注意を払わなければならなくなりました。ある炉の状態の悪化による放射線量レベルの上昇や、爆発による瓦礫の飛散、設備の損傷などによって、他の炉や使用済み燃料貯蔵プールに対する対策が妨げられたことで、危機は次々に拡大していきました。

 国民に対してはっきりとは知らされていなかった今回の事故の最大の危機が、この検証の中で明らかになりました。2号機などの格納容器の圧力が上がり爆発により大量の放射能が一挙に放出される可能性があったことと、運転休止中の4号機の使用済み燃料プールが建屋の水素爆発で大気中にむき出しの状態となったことについて、政府上層部が長期にわたり強い危機感を抱いていたことがわかりました。事態が悪化すると住民避難区域は半径200km以上にも及び、首都圏を含む3000万人の避難が必要になる可能性もありました。原子力委員会の近藤駿介委員長らはこうした見通しを「最悪のシナリオ」として検討し、菅首相に報告していました。」

                                         ⇒続く