(乳幼児精神保健学会誌Vol.7 2014年10月より)
「絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ~柳田邦男
絵本の役割
「絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ~柳田邦男
絵本の役割
これから少し日常的な中で絵本が果たす役割を紹介していきます。先ほど申しあげましたように子どもは言語化できなくてもいろんなことを感じ取っている。とりわけお母さんの感情の揺れ動きを鋭く感じています。これはW先生たちが日ごろから強調していることで、だからこそ乳幼児期の精神保健の取り組みはとても大事だというわけです。やはり乳幼児期に子どもにとって好ましくない様々な状況が周りにあると正常に成長曲線をたどるだけではなくて、抑圧された表情の乏しい、暗い顔の子になってしまう。子どもたちはいろんなことを体でわかっているけれど、また乳幼児期には言葉で表現できない。すると大人はわからないということで安心し、子どもを低く見たりする。これはとんでもない間違いです。文脈をきちんと整えた形で自分の体験や辛さを理解しているのではないけれど、全体としてそれが従来のものであるか、あるいは将来を左右しかねないことであるのかはわかってる。そこを大人は賢く感じてあげなければいけない。そういう問題だと思うんです。それは絵本の読み聞かせの実践の中でとてもよくわかってきます。」
