「AIJ投資顧問」が、運用を任された企業年金資金約2000億円を消失させた問題は大がかりな詐欺事件に発展しつつある。何故厚生年金基金がいとも簡単に引っかけられたのか、その背景には5.5%で資産を運用しなければという縛りがあったからだ。
年金には確定給付型と確定拠出型があるが、確定拠出型は個人が運用するので日常から自分の運用実績が把握でき、元本保証以外の債権や株式で運用していれば、この10年差損が出ているケースが多いけど、明確に判る。確定給付型は加入者個人は所属する会社か厚生年金基金に運用を任せ、5.5%の運用を約束されてるのでほとんど自分の年金資産には関心がない。
確定給付型の厚生年金基金は資産運用が命だが、主に大企業が単独で設立する「単独型」と、グループ企業と共同で設立する「連合型」ですら、資産運用の経験者を役職員に採用していない基金が67%を占め、主に中小企業が集まって設立する「総合型」では82%という調査結果だ。プロが運用しているのかと思ったが、実際は素人集団で、このデフレの時代に5.5%で資産運用をするのは不可能に近い。
そこで、投資顧問会社にたより、AIJは基金側に利回りについて「初年度に35%、05年度までは10%超だ」「2002年運用開始以来、昨年までの累積の利回りは約250%に上る」と説明、その極意は「英領ケイマン諸島のファンドを通じて、株式や債券などを組み合わせた金融派生商品への投資」と言って基金の運用担当者をころりと騙したわけだ。世界の金融情勢を多少知っていれば10%以上も運用できるはずがないと判るのだが、実際は運用益が出たのは最初の1年間だけだった。
基金の被害はAIJへの投資額によるが、中小企業の統合型基金では会社が損失を補填できることは難しく、年金給付が減額されることが予想される。確定給付が確定でなくなるわけで、こうしたことはこのデフレ時代(超低金利時代)今回の被害を受けなかった基金でも5.5%の運用が保証されなくなり、年金減額もあり得る話だ。
国の厚生年金も今の国会での議論を聞いていると最低保障年金さえも難しい、若い人は自分で勉強、研究しながら個人年金でリスク回避をお薦めする。