14日、200万人の組合員を擁する金属労協加盟大手組合に回答が示された。予想どおり、定期昇給のみの実施と業績による一時金(賞与)の回答で輸出産業主体の組織だけに厳しい内容となった。中でも赤字企業では定期昇給を実施しても、その後一律賃金カットを行うとの条件付きだ。金属労協とは異なり、比較的業績の良い内需産業の組合では若干のベースアップが期待できるが、平均的には過去2年間の実績並みの春闘になることは確実だ。
過去2年間の実績は厚生労働省が毎年7月末、従業員1000人以上の労働組合のある企業のうち、妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)等を把握できた300社余の数字を以下のごとく公表している。
2010年妥結額5516円、増加率1.82%、前年比-114円、-0.01ポイント
2011年妥結額5555円、増加率1.83%、前年比+39円、-0.01ポイント
2012年も、5500円強の賃金改善で率にして1.8%強になると予想される。これはあくまでも大企業(資本金10億円以上、従業員1000人以上)での話であるが、時給に換算すると30円強の改善で、最低賃金やパート労働者の賃金改善の参考にはなる。
新聞報道によると、NECは赤字決算が予想され、リストラの一環として、従業員の賃金を4%、4月から12月まで一律カットしたいと会社側は提案した。定期昇給は実施してからカットするので定期昇給分だけ、カットは少なくなり、賃金体系にも影響しないので、簡便な方法だ。本来は賞与で業績を反映させるべきだが、会社の実態がそれでは間に合わないくらい悪いということなのだろう。組合としてはこのカットを飲んでも、将来業績が回復したらカット分を賞与に上乗せするか、臨時手当で埋め合わせを条件としたいところだ。
今回、表にはあまり出ないが、65歳までの雇用延長を労使交渉の俎上にのせている。今後の協議事項となろう。熟練労働者不足の造船業界では労使が積極的で、延長部分の労働条件が課題となっている。