人命は地球より重いという言葉があるが、アルジェリア政府にとっては人命より石油・ガスプラントの方が大事だった。日本人を含む多くの人命を犠牲にしてテロリストを攻撃し制圧した。独裁国家の政府は関係各国の人質の人命尊重という要請など一顧だにしないでひたすら宝と言っているプラントを守ることを優先させた。
アルジェの宝なら何故多くの軍を常駐させ警備をしなかったのだろうか?たった40人のテロリストに制圧されるとは油断以外考えられない。テロ攻撃の対象になっていることは予想されたから治安部隊で警備させていたのだろう。日揮も長年の操業で充分そのことは知っていただろう。もっと多くの軍による警備をアルジェ政府に要請しなかったのだろうか悔やまれる。
アルカイダが生まれ、9.11事件以来、次々とテロが発生し、今や中東やアフリカは常時戦場と考えなければならなくなった。私にも苦い思い出がある。1980年代前半イランイラク戦争の時、制空権をイランに奪われた中で、三菱電機はイラク・バスラの発電所などを受注し、現場の作業員を派遣するかどうか会社から判断を迫られ、組合の担当役員だった私は悩んだ。事前に部下を現地に派遣し調査したり、各方面から情報を集め、イラク政府が24時間体制で軍隊による警備を保障するという条件で組合員を派遣した。
しかし、未明のイラン空軍の空爆でバスラの発電所は破壊された。幸い従業員宿舎は離れていたので組合員は無事だったが、それ以来戦場には出張させないという不文律ができた。現在は当時以上に多くの各種プラント受注が危険な地域であり、日本人の長期滞在は日常のことになり、やや神経が麻痺していることが今回の悲劇を生み出したのではないだろうか。
人命は地球より重いという言葉を企業はもう一度かみしめて貰いたい。