インフレターゲット2%を設定、金融緩和期待から円安傾向、そして株価は12週連続上昇と証券業界は騒然となりだした。株のセミナーはどこの会場も満員とのこと。しかし、企業の10~12月期決算の内容は必ずしも良いとは言えない。予想より減益とか赤字転落といった企業も出てきて実体経済は異なる。
円安といってもまだ92円程度、購買力平価での95円~97円には届いていない、円高が是正されてる過程といった方が正しい。100円を超えれば円安という言葉を使っても良いのではないか。それなのに証券業界のアナリストは円安だから円を持つリスクを回避するために株、外貨、金を持てと吹聴している。バブルになっているからとにかく現金を持つな貯金を下ろして投資を、人より先にやれと煽っている。
バブルの経験を持つ私たちの年代から見ると危なっかしくてつい口を出したくなる。バブルが史上初めて起きたのは1637年にオランダで起きたチューリップ・バブル事件だ。貴族の趣味でオスマン帝国から輸入されたチューリップはそのあでやかさで人々を魅了したが、新種のチューリップ球根に人気が集中し、投資の対象となり、庶民までが家財道具を売って投資を始めると異常な高値がついた。高くなりすぎた球根は買い手が付かずやがて価格は100分の1以下にまで下がり、オランダ経済は混乱に陥った。チューリップ・バブルは人の心理は付和雷同で異常になり、解明できない行動をすることを示した。
日本のバブルは土地という希少性をねらって起きて、日本の時価が広い米国の数倍になるとうあり得ない事態まで膨れた。庶民に借金をさせ賃貸アパートを建てさせるという愚挙や民営化したNTT株の公募に群がり、宝くじ並みの抽選会が開催された。一株でも当たった人はすぐ処分すれば車が買える儲けが1日の内に実現した。そうしたことがマスコミに報道され、株を買わないと不安になるという心理をかもしだし、前述のオランダ人と同じ行動を取る庶民が続出した。3万円近くまで上った株価や膨れた地価は破裂して多くの悲劇をもたらした。
11000円の株価がいくらになったらバブルかということは言えないが、適正な株価の範囲は明確に判るわけだから株を買うにしても冷静な判断が可能でアナリストの扇動に乗らないことだ。バブルの被害を受けない注意点としては、借金してまで投資をしないこと、株価が半分になっても生活に困らない範囲で投資をすること、素人は先物に手を出さないこと、外貨を買うには外貨預金程度にしておくこと