いまやEUの盟主的な存在となったドイツはリーマンショック後の0.5%マイナス成長を乗り切り、昨年は0.7%の成長に回復したが。所得格差拡大という大きな犠牲が伴った。1年前はギリシャ問題でEU始まって以来の危機をむかえ、現在はスペイン、ポルトガル、イタリアにまで拡大し、ドイツへの負担は更に大きくなるリスクも存在する。
リーマンショック後、ドイツは政労使の社会対話の中でマイナス成長を克服した。対策の柱は廃車をすれば補助金を出すという経済刺激プログラムと短時間労働(ワークシェアリング)を柱とした労働市場プログラムで、それなりの効果をあげた。しかし労働市場プログラムは失業率の低下というプラス面があったが賃金格差の拡大という結果と雇用保障の低下というマイナス面も生み出した。
2012年、低所得層の所得が減少しているにも拘わらず、第10分位の富裕層は13.4%も所得が増えている。1%の富裕層は所得を47.7%まで増やしている。また、非正規労働者は23%を占め、2009年以来失業率が下がっているのに貧困率が15%へ悪化したという現象も起きている。今や800万人が時間給8ユーロ以下で働いている。
これを乗りきるには、より手厚く保護された終身のフルタイム雇用と言いきり、日本の終身雇用制が欧州で見直され始めたようだ。