中国バブルといっても中国経済のことではない。もっと大きな中国という国家そのものへの日本人の期待感がバブルのよう膨らんで、破裂しついに終わりを迎えているという意味だ。人間の心理とは不思議だ。振込詐欺にしても、思い込み、思考停止で引っかかる。他人からすれば何で息子に確かめないで振り込んでしまうのだろうと思うが、本人にしてみれば考える余裕がないように仕組まれるわけだから虎の子の大金を振り込んでしまう。
日系企業の中国への大挙した投資は、10%の高度成長、13億人のマーケット、勤勉な労働者という背景があった。日本の企業は横並びでライバル企業が投資をすると、リスクについては思考停止で巨大な市場に乗り遅れるなとなり、いつの間にか引くに引けない状況となってしまった。1989年私は電機業界労使で招待を受け訪中し、最初に工場を建設した松下のブラウン管工場や上海の三菱エレベータ工場、深センの三洋などを視察した。当時は技術援助含みの進出で大歓迎された。
その後の中国の大発展は外資の工場からの輸出が寄与したモデルで、発展論として歴史的なことだ。10%の高度成長で上海はマンハッタンをモデルにして超高層ビル街が出現し、不動産投資のブームは全国に拡がった。この光景を見ると日本人誰もが中国に投資をと熱気をおびたことは間違いない。日本を代表する企業のいくつかは中国銘柄といわれるくらい中国市場に入れ込んでいる。しかし、尖閣列島事件で中国に対する期待バブルは一気に破裂した。
1989年に訪中した時には「中国は井戸を掘った人を大切にする」と歓迎の席で言われた。ところが尖閣列島事件でデモを扇動し、パナソニックの工場を襲わせ、日系スーパーの商品は略奪された。中国に対するパラダイムチェンジが必要で冷戦状態の中での限られたお付き合いとなると思考を切り替えなければならない。。