軽減税率を侮ってはいけない。産業構造に大きな影響を与えるからだ。前回紹介したとおり、軽減税率で優遇されている伊、仏のカフェや各種のレストランは華やかに栄え街のシンボルとなっている店さえあるが、25%VAT適用のコペンハーゲンではマックを見つけるのも苦労する。夜の夕食はチボリ公園のレストランで済ませることが多かった。
日本では、居酒屋、ファミリーレストラン、各国料理のレストラン、郷土料理など世界でも最も充実した外食産業があり、待遇にはイマイチ問題があるが多くの労働者が働いている。特に牛丼チェーンでの競争は激しく、10%以上の消費税が適用されたら経営が成り立たない公算が強い。
欧州各国では食料品は殆どの国で軽減税率を適用して庶民の生活に配慮している。だからVAT20%でもパンも肉もワインも日本より安いか同程度だ。私が普段飲んでいる豪州産ワインイエローテールの値段もパリのカールフールでほぼ同じ値段で買える。フランスのテーブルワインはその半分の値段で買える。
ドイツのようにマックで食べると標準税率の19%、テイクアウトだと7%の軽減税率というやり方もあるが、日本で実行したら店の外で食べる客が多くなり、椅子のない屋台が流行ったり街の風景も変わってくる。
文化・スポーツへの軽減税率も課題だ。観客の動員が採算と結びつき、税率によっては存続すら危ぶまれるものも出て来る。
消費税の軽減税率を考えるに当たっては、雇用の問題と伝統文化や食文化を念頭に置いて貰いたい。