華々しく開催されたワールド・カップ、世界中が盛り上がっていると思うが,肝心のサンパウロで開会式の日にも開催に抗議するデモが起きている。開催費用を福祉予算に回せということが趣旨との新聞報道だが、開催費用はスタジアムの建設費を含めても福祉予算の20分の一にすぎない。
背景を探るために、米国のCIAのデータでブラジルと日本を比較してみた。
ブラジル 日本
1人当たりのGDP 12100ドル 37100ドル
消費者物価上昇率 6.2% 0.2%
失業率 5.7% 4.1%
貧困率 21.4% 16%
内極貧率 4.2%
ジニ係数 51.9 37.6
所得分布下位10% 0.8% 1.9%
上位10% 42.9% 27.5%
この数値を見ればすぐ理解できるように、日本の格差社会とは次元が違う格差が存在する。失業率5.7%は欧米の基準から見れば悪くはないが、食べるにも困るという極貧率が4%を超えている。上位所得1割の人が所得・消費を4割以上占め、ジニ係数が5割を超え、サッカーどころでないという貧困層の鬱憤がワールド・カップにむかっている。当然犯罪も多く、日本人観光客は真っ先に狙われる。
政権は労働者党で、組織労働者は恵まれ、地下鉄のようにストも打てる。前大統領ルラ氏は貧困家庭向けの食料援助や援助金制度などの政策で人気を得たが、その後財政逼迫で引き継いだルセフ大統領は困難に直面している。