行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

今時の資本論「資本主義の終焉と歴史の危機」

2014-06-27 23:09:39 | Weblog

久しぶりに書評を書きたい本が出た。水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」で、ずいぶん大風呂敷な題名だなと思い読んでみたが、ほんとに大風呂敷で新書にも拘わらず、中身は資本主義の起源から変遷の歴史書であり、利子の起源から最近のゼロ金利までの経済分析を基底に資本主義が発展すればするほど過剰生産、バブルが発生し、富は一握りの人々に集中し最後には資本主義の終焉を予言している。ただし、それに変わるシステムはいまだ不明で、今後の研究に待つと著者は言う。それまではいたずらに資本主義の延命を策する(アベノミクスもその一つ)より、分配の公平さを追求すべきと説く。

資本主義が発展するに従い、富の分配が偏り大多数の人々の購買力がなくなり、国内市場は限界となるというのはマルクスの資本論的な展開だが、水野氏は国内市場が壁になるとグローバル化が推し進められ、途上国へと世界市場を求めたが、中国のバブルを見るようにこれもやがては限界となる。米国は電子・金融空間を作り出し、リーマンショックのバブル崩壊にも懲りず、世界からマネーを集めているが、余剰マネー140兆ドルが世界を徘徊しその規模は実物経済の2倍になっており、やがてバブルは破裂するとしている。

資本主義は絶えず、新市場たる辺境地域を求めるまたは作り出そうとして来たことは事実だが、途上国の発展に限界が見えたというのはやや早すぎるのでないか?途上国の人々はかつての日本人のように明日は必ず良くなる少しでも豊かになるということで励んでいる。もちろんアルゼンチンのように後退する国も出て来るかもしれないが、全体的には中期的には成長するのではないかと思う。

問題の日本のばあい、20年間も国債利子率がゼロに近い水準で、既に資本主義の終焉に近づいているとし、アベノミクスは悪あがきでむしろバブルを発生させ、その破裂により益々中間層が減り、大多数の国民が危機に直面すると主張する。むしろ日本は世界に先駆けて財政を均衡させゼロ成長の定常状態にすることが求められていると分配論を展開するが、これは浜矩子氏の論に似かよってる。

膨大な内容で、水野氏の指摘には目の鱗現象が多く、若い人に知ってもらいたい場面を次回紹介したい。

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