先日の東京放送WBSで、ユニクロの地域限定正社員で働く子持ちの女性社員が5時に退社し、保育園に子供を迎えて帰宅する映像取材と、ユニクロの柳井社長のインタビューを見た。以前このブログで柳井社長の賃金論を批判し、退職率の高さ等ブラック企業の風評もあると書いたが、今回のインタビューではこうした批判をまともに受け止め、大きく変えようとする意欲も感じられた。
地域限定正社員は国内のユニクロ856店舗で勤務をする全パート・アルバイト約3万人の半数以上に当たる1万6000人を正社員化するというものだ。この制度は2007年4月に運用を開始したが、対象者5000人のうち、現在の地域限定正社員は約1400名に過ぎず失敗に終わった。原因は「正社員と同じく、繁忙期である土日の勤務や週40時間のフルタイム労働を求めた点に無理があった」とユニクロは分析している。今回の新制度では短時間勤務でも地域限定正社員化するというところがみそだ。今流行りの女性のワークライフバランスも考慮し、長期的な人材の確保や生産性を向上させるための人事制度改革だという。
先のインタビューで柳井社長は人件費負担は1人当たり2割増えるが、経験を積んだ従業員による効率のアップで補えると断言している。大幅なコスト増もスタッフが定着することによる採用コストの抑制、アルバイト訓練費用の削減、習熟したスタッフが増えることによる生産性向上でまかなえるとの判断なのだろう。
今回の地域限定正社員制度は、サービス産業の人材不足と生産性の低さを克服する試みであり、企業と従業員双方にとってメリットのあるもので多いに評価したい。ホワイトカラー・エグゼンプションなどよりはるかに社会的なインパクトは大きく、オランダ型の正社員制度に類似しており、社会保険の担い手が少しでも増える点でも是非成功して貰いたい。