フランスのピケティ教授が来日、多くの講演会やテレビのインタビューをこなしている。彼の理論の根幹は膨大な歴史的データから「資本収益率はこれまで経済成長率を上回ってきたため、資本を持つものは賃労働者より金融資産を増やし、所得格差が拡大してきた」というものだ。昨年格差社会米国では、1%の金持ちが資本収益で稼ぎまくり、オキュパイ運動が起きただけに共感を得てブームとなった。日本ではこの20年間世界で唯一といってもよいほど経済成長がゼロ、物価上昇率もゼロに近い中で、資本収益は低かったけどプラス、一方賃金は低下し続けマイナス状態が続き、格差社会の仲間入りをしたため、ピケティ教授の理論がなるほどと納得するわけだ。
それにしてもこの20年間日本の経済学者は何をしてきたのだろうか、経済成長が必要だということは説いても人口減少という社会現象に対応できなかったことと、資本収益率という金融の世界にはあまり関心がなかったのではなかったか。ピケティ理論に対する日本の経済学者の反応は概ね肯定的で格差社会に対する処方箋「富裕税の創設」を見逃してきたことは認めている。労働者は全て非正規社員にと言って話題をまいている竹中教授もピケティ理論に対しては格差をなくすべきだと協調している。全員が非正規社員になれば、全員給料が下がり低いレベルで格差はなくなるとでも言うのだろうか。
安倍首相は国会でピケティ氏も経済成長は大事だと言っていると答弁した。資本収益率に追いつく経済成長が大事だと確かにピケティ氏は言っているが、あくまで同時進行が重要で安倍首相が主張してきた「経済成長で大企業が儲かれば株価は上がり、やがて賃金の引き上げにつながり、大多数の中小企業の経営にもプラスになる」という段階論とは違う。ピケティ氏は賃金の引き上げが経済成長と同時進行が必要と春闘を後押ししている。