曽野綾子さんの産経新聞に掲載されたコラム「労働力不足と移民」と題した中で、介護の労働移民について条件付きでの受け入れを認め、南アフリカで人種差別が廃止されても生活習慣の違いから分かれて住むようになった例を挙げ、移民は住まいは別にした方がいいとの考えを述べた。これに対し、ペコ大使は「アパルトヘイト(人種隔離)を許容し、美化した。行き過ぎた、恥ずべき提案」と怒り、抗議した。
どこで曽野綾子氏は間違がったのだろうか?ペコ大使がどうしても抗議しなければならないことはマンデラ元大統領をはじめアパルトヘイト政策と永年闘ってようやくできた南アで人種隔離生活がまだ存在していると言う指摘だろう。移民が入ってきて、イタリア人街とか中華街とか自然発生的にできたのとは違い南アの黒人が隔離された地区はタウンシップと呼ばれ、強制的に白人政府が作ったものだ。現政府が懸命にそのタウンシップを解消しようとしているのに、今度は貧富の差が障害となって現存している。その触れられたくない国辱部分を曽野氏は名指したわけだ。
現在、南アはサハラ以南の国々の中では巨大で、経済的には他の国が束になっても勝てないほど国力がついてきたが、政府の中心部にいるANC(アフリカ民族会議)やそれを支える労働組合の高級幹部など富裕層と3割近くの失業者との格差は大きく、アパルトヘイトはなくなったが教育格差から貧富の格差となり、1人当たり国民所得は1万ドルを超えても平均の数字で途上国の雄の悩みは深い。