ホンダは国内の従業員約4万人の定年を60歳から65歳に延長することで労使が合意をした。60歳以上を雇う制度は今までもあったが、給料はそれまでの半分で、負担の重い海外駐在もさせないと労使で取り決めていた。新制度では8割程度の給料を保証し、新興国を中心に海外にも派遣できるようにした。
熟練社員不足の今日、理にかなった選択と言える。特にグローバル化の進んだホンダのような企業では今後海外要員が不足することは充分考えられる。夫婦で海外に赴任することは子育て世代社員よりも抵抗が少ないし、体力的にも今の60代は耐えられる。定年退職後は海外でと考える人もいるくらい、海外の環境も改善されている。シルバーボランティアの活躍を見ても、最先端の技術より既存の熟練した技能、技術の方が途上国工場では役に立つことも多い。
ホンダで何故一番にこうした定年延長ができるのか、背景には社員の心身体力維持への条件がある。日本の企業では珍しく、いち早く有給休暇ほぼ完全消化を達成している。また、育児休暇の取得率も高い。細かいことだが定年延長して熟練の社員が増えることは余裕ができる。従って休みも取りやすいし、産休はもちろん育休も介護休暇も取りやすい。誠に理にかなった施策だ。