行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

経常収支黒字の行方

2015-12-08 23:39:43 | Weblog

10月の日本の経常収支は、石油価格の下落を受けて貿易収支が改善したことなどから1兆4584億円の黒字となり、16か月連続の黒字となった。昨日のニューヨーク市場では石油価格が1バーレル40ドルを割りこみ、37ドルになったという。Opecが総会で減産を決められなかったからだ。経常収支は貿易収支が赤字でも所得収支がそれを僅かに上回るという図式が完全に崩れた。その大きな要因は100ドルもした石油価格が半分以下になったことと、インバウンド消費(旅行収支になる)が予想をこえて大きかったということだ。10月の統計を見ても、輸出も世界需要の低下で3.2%減少したが、輸入は石油価格の大幅下落で16.4%も減少し、貿易収支は先月から黒字化している。

日本にとっては石油価格の下落は天佑みたいなもので、まさか貿易収支が黒字になるなど予想外の出来事だ。ただ石油価格の下落は世界経済にとってプラスばかりでなく、産油国の財政や石油関連企業に大きな影響を与え今日の東京市場株価は昨日のニューヨーク市場に連動して下げている。このまま推移すると、日本の経常黒字が拡大し、また円高になって輸出企業の経営に影響を与えることになり、天佑などと呑気なことは言えなくなるかもしれない。

こうした中で、消費支出に大きな影響を及ぼす消費税の増税を来年行うわけだが、来年半ば、円高と同時になる可能性が出てきた。消費者にとって石油安の恩恵はガソリン代の安さであるが、円安で200兆円貯め込んでる企業から賃金アップの分配を受ける前に円高傾向が見えてくると、これまでの歴史では企業が財布の紐を締めることになる。GDPの6割を占める個人消費の不振が回復する前に更に悪化することが予想される。消費税の軽減税率が議論されているが、これも木を見て森を見ない政治の典型だ。

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