アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

演奏の「楷行草」(世界は"翻訳"であふれている)

2023年11月26日 | ピアノ
今日は「世界は"翻訳"であふれている」というイベントにいきました。

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なんでも、翻訳の話をしつつピアノの演奏もあるというので、「え? 私いかなきゃ」と思って行きました。(もう翻訳の仕事してないけど)

副題が「楽譜の"翻訳"と原書の"演奏"の試み」というのですが、なんのこっちゃ、というと、
演奏でも翻訳でもinterpretationであってまぁ元々似たようなものですよね。「元」を最大限尊重してそれを損なわないようにする作業でありつつそこに解釈や表現や創造性が求められるというような。

「忠実性」と「独創性」…この引っ張り合い(テンション)の中に翻訳/演奏はある

今日のイベントは、ピアニストと翻訳家の対談の形式をとりつつ「演奏」「翻訳」の実例を見せてくれるということのようです。

演奏のほうでいうと、ショパンの最も有名な曲「ノクターンOp.9-2」を三種類弾いてみせるというのがありました。
(1) 指定テンポのとおりメトロノームのような、三拍均等に「楽譜どおり」音符を並べる演奏
(2) ある程度の揺れがある、私たちがイメージするような普通(自然)な演奏
(3) 揺れ、装飾多めの盛り盛り演奏

これをそれぞれ「楷書」「行書」「草書」にたとえていたのですが、それについては異議ありです。
いうまでもなく(1)は聞いて楽しくも美しくもないし、なんなら演奏として成り立っているとはいえないものですよね。
一方、楷書はそういう字体であるということにすぎず、正解はひとつではないし、美しい楷書、作品というものはありうる。別に「楷書=ヘタクソ」って意味じゃないのだからこれとそれは違います。

まぁそれはたとえが適切でないというだけで、いいたいことはわかります。

楽譜を機械的に読んで、ハイ一拍ねハイ半拍ね、じゃあそれらはきっかり2:1で…ドといったらド、ミといったらミで、フォルテといったらこの音量、ピアノといえばこの音量って「楽譜どおり正しく」並べただけでは演奏にはならず、それはショパンの意図しているものというか、表現しようとしているものとは違ったものになるわけです。もっと…フレーズの形とか、多声の構造とか、リズムの持つ性格とか…深く、楽譜を読みこんで汲み取って、それを十全に表現するにはどのように弾いたらいいか、そこには主体的な思考が必要になりますし、結果として生まれる演奏は他とまったく同じになるということがないのです。

翻訳でいえば、英語の「He」「I」「my」とか全部いちいち明示的に訳して「僕は僕の父親に言ったのです…」とかいうと何がなんだかわからない(笑) それこそ単語帳にあるこの英単語にはこの訳、みたいのをつぎはぎして全部並べたら意味がわからない訳文になってしまう。

それは、「代名詞」というものの役割が英語と日本語で違うからで、英語では「機能語」、構造を作っている言葉なので省けないけれど、日本では「内容語」なので内容がないようなら書かなくてよい。代名詞がなくても、「いってくれた」「いわれると」「だろう」「むこうにも伝わった」のように、視点や方向性を示すことができるのでいらないんですね。

それで、じゃあ翻訳と演奏が似てるから何なんだい、って話なんですけど、似ているからお互いによそ様の言葉や考え方がヒントになったりする、というのはあると思います。

今日の対談の中でも、翻訳家の方がいった言葉のほうが、「おぉ」と新鮮に受け止められるものが多数ありました。

「翻訳は読みが9割」
「辞書を引くのは大事だけれど、辞書にあるのは昆虫標本みたいなもの(いつか生きていた、今は死んでいる)なので、翻訳のときにはもう一度生きている言葉として捕まえ直さないといけない」
「わかりやすさ、こなれ感のみを求めていくと大きく道を誤る」
「『てにをは』がおかしいという言い方があるけど、この一文字がおかしいというときは、そこだけ直して済むような話ではなく、根本的に何か違うのだから読むところからやり直し」

そして最後にお二人とも「正解がないことに耐えてほしい」とおっしゃっていました。



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